外反母趾の治療法。痛みを緩和するための保存的治療と手術的治療

外反母趾
足の親指(母趾)が、人差し指(第二趾)の方に曲がってしまう外反母趾は、母趾の付け根の関節部が突出しているため、靴に当たると痛みを生じる疾患です。悪化すると、靴の当たる部位から炎症を起こし、靴を履いていない時にも痛みを感じるようになります。 外反母趾の治療法には、どのようなものがあるのでしょうか。奈良県立医科大学附属病院整形外科教授の田中康仁先生にうかがいました。

外反母趾の重症度分類

 

 

外反母趾の治療は、基本的には、痛みを緩和するという治療法になります。

 

 

外反母趾の重症度分類

 

 

親指がどれだけ外に向いているかという角度外反母趾角と言いますが、この角度は、15度未満が正常とされています。

 

外反母趾角が20度までが軽症20度~40度までを中等症それ以上の角度になると、重症の外反母趾であると言われています。

 

 

外反母趾の保存的治療

 

 

軽症の外反母趾の場合は、指の間に何かを挟みこむ、トゥプスレッダーという治療法が一般的です。

 

中等症以上の外反母趾では、親指の付け根の関節が半分抜ける、亜脱臼という状態を呈します。この場合は、ストレッチング(筋肉を伸展させること)を行い、元の状態に戻すなどの体操による治療を行います。

 

それ以外の治療法としては、足底挿板を用いる方法もあります。重症の外反母趾患者においては、偏平足を合併している方も多いため、アーチサポート付きの足底挿板を履くことが有効です。

 

 

アーチサポート

 

 

また、外反母趾装具を装着する場合もあります。しかし、あまりに重症な方が外反母趾装具を装着すると、変形が強すぎて、装具が足に合わないケースも多いです。そのため、結局装着しない状態になってしまいます。

 

外反母趾の保存的治療のポイントは、足の親指の中足骨を押さえることにあります。

 

亜脱臼を起こした親指は、外側に開くことができません。外反母趾の場合は、親指の中足骨が広がってしまっているため、その広がりを両側から押さえる工夫が必要です。中足骨の広がりを押さえ、親指の関節の突出を軽減させることで、靴を履いた時の当たりが柔らかくなり、痛みが緩和されます。

 

 

外反母趾の手術的治療

 

 

外反母趾の手術イメージ

 

 

外反母趾の手術的治療法としては、亜脱臼した筋肉を元に戻す形式の手術を行います。骨を切ることで矯正しますが、それと同時に、異常な位置にある筋肉を元に戻す手術を行っております。変形に対する手術であることに加え、足先の手術であるため、専門家にとっては取り組みやすく、対象となる患者さんも多い手術となります。

 

 

しかし、一方で、もっとも難しい手術でもあります。外反母趾の手術は、患者さんが、手術によって目標とする改善レベルが高いため、患者さんの希望に合わせて、的確な手術を行わなければなりません。

 

また、一般的に荷重関節は、垂直方向の荷重を受けるので、縦のラインの動きのみを考慮すればよいのですが、これに対し外反母趾は、垂直ではなく、水平のレベルの部位の疾患のため、影響を受ける動きも異なります。普通の箇所の手術とは、少し考え方を変える必要があります。

 

 

外反母趾の手術は、内に曲がっている箇所を真っ直ぐにする手術ですが、これは手術全体の一部分であり、実際には、周りの組織を修復することを同時に行っております。

 

重症の外反母趾は、親指だけでなく、他の指にも異常があることが多いです。二番目の指が脱臼していたり、曲がってハンマートゥと呼ばれる状態になっていたりなど、様々な症状が起こっている可能性があります。手術では、症状が残らないよう、異常のある箇所を全て修復していくことになります。

 

 

外反母趾の手術は、関節の近くを触る手術のため、関節の動きが悪くなる方が多くいらっしゃいます。そのため、術後早期から運動をしていただくことが大切です。関節を動かす稽古を行っていただきます。関節を動かすトレーニングを、患者さん自身に頑張っていただくことが、術後の満足度に繋がると思います。

 

 

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