胃がんが見つかったらーー不安の共有を

内視鏡治療
がんのなかでも罹患数が最も多いのが、胃がんです。 胃がんはどのようなきっかけで発見されることが多く、どのような検査、治療を行うのか――。 聖マリアンナ医科大学病院 腫瘍内科の中島貴子先生に教えていただきました。

 

胃がん発見のきっかけ

 

 

胃がんの主な初期症状

 

 

胃は、口から入った食べ物が食道を抜けてたまる場所なので、

・ムカムカして食欲がない

・食べたものを吐いてしまう

・食べられなくて体重が減った

など、食事に関することを訴えて来院される方が多いです。

 

また、胃がんが大きくなると出血しやすくなります。その血が酸化して黒くなるので、「タール便」と言って、黒い血が混ざった真っ黒な便が出ることがあります。そういう便の色や、貧血による立ちくらみが気づくきっかけとなることもあります。

 

そのほか、症状はまったくなく、検診や人間ドックで胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)を受けてがんが見つかる方もいらっしゃいます。

 

 

がんが疑われたら――検査

 

 

胃内視鏡検査イメージ図

 

 

まず行うのは、上部消化管内視鏡検査です。

細い管状のカメラを口から入れて、胃の内部を観察します。その際、がんが疑われる病変の一部を、小さなクリップのようなもの(鉗子)で摘み、採取します。

その取ってきた組織を顕微鏡で見て、本当にがん細胞があるのかを判断し、がんかどうかの確定診断を行います。

 

次に、がんは大きくなると転移する可能性があるので、がんがどこまで広がっているのかを調べる検査を行います。

もっとも一般的なのが、CT検査です。胃がんが転移しやすい首から骨盤の下までの範囲を、5ミリから1センチおきに細かく横断撮影し、どこの臓器にがんが転移しているのかをチェックします。

 

 

CT検査イメージ図

 

 

そのほか、MRI検査PET検査腹部の超音波検査上部消化管造影検査(バリウム検査)を補助的に行うこともあります。

 

 

胃がんのステージと治療法

 

 

胃がんのステージ分類

 

 

治療の選択肢を決める上でいちばん大事なのが、病期分類(ステージ)です。

 

・胃がんの深達度(がんがどの層まで進展しているか)

・リンパ節転移の個数(近くのリンパ節にどのくらい転移しているか)

・遠隔転移の有無(ほかの臓器や遠くのリンパ節に転移しているか)

 

胃がんでは、この3つの要素の組み合わせでステージが決まり、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期の大きく4段階に分けられます。

 

 

胃がんに対する各ステージごとの主な治療方針

 

 

ステージⅠのうち、がんが胃の粘膜に留まっている場合は、リンパ節転移の可能性が低いので、内視鏡で胃がんを取り除きます。

 

内視鏡で取れるほど浅くはないが、遠隔転移はなく、リンパ節に転移はあっても取れる範囲内である場合、つまりは主にステージⅢまでの方は、手術でがんを切除するのが基本です。

ただし、いまは、ステージⅡ、Ⅲの方でもほとんどの場合、術後に抗がん剤治療(化学療法)を行います。これを「術後補助化学療法」と言い、「手術+術後補助化学療法」が標準治療です。

さらに、ステージⅢのなかでもがんが大きかったり、リンパ節転移の範囲が大きかったりする場合手術の前に抗がん剤治療を行うこともあります。

 

そして、遠隔転移がある、もしくは手術では取り除けないような大きさになっている場合は、抗がん剤治療(化学療法)が標準治療になります。

 

 

不安があったら……

 

 

内視鏡治療にしても手術にしても、一定期間、仕事を休んだり家庭を空けたりする必要がありますし、抗がん剤治療(化学療法)となると、かなり長い期間、治療と日常生活との両立が大切になります。

ですから、がんを攻撃する薬だけではなく、症状や副作用をやわらげる治療も欠かせません。これを、「支持療法」と言います。

 

私たちは、治療を中心に考えるのではなく、日常生活のなかに薬物療法、治療を組み込むという考え方でサポートしています。それは症状を取り除くことだけではありません。

仕事や家事、子育て、趣味など、患者さんが今までの生活が継続できるよう、医師、看護師、ソーシャルワーカー、社会保険労務士、栄養士など多くの職種がかかわり、支えています。

 

がんと診断を受ければ大きな不安を抱えるでしょう。その不安を、どうぞ医療従事者にぶつけてください。不安を少しずつ解消しながら、前向きに病気のこと、治療のことを捉えていっていただければと思っています。