神経内分泌腫瘍とは、どんながん?

内視鏡治療
「神経内分泌腫瘍」という、がん。一般の方にとってはあまりなじみがない病名かもしれません。 がん全体の1~2%と言われ、希少がんの一つに挙げられますが、最近では、診断の精度が上がり、増加傾向にあります。 神経内分泌腫瘍とはどのようながんなのか、どのような治療を行うのか、国立がん研究センター東病院 希少がんセンターの肱岡進先生に教えていただきました。

「神経内分泌腫瘍」とは

神経内分泌腫瘍は、神経内分泌細胞から発生する腫瘍です。

 

神経内分泌細胞とは、ホルモンを作り出す細胞で、全身に分布しています。

そのため神経内分泌腫瘍も全身の臓器からできますが、なかでも多いのが膵臓や消化管などの消化器、肺です。

 

神経内分泌腫瘍は、以前は「カルチノイド」と呼ばれていました。つまり、“がんもどき”です。

 

胃や直腸などの消化管に見つかったコリッとした神経内分泌腫瘍であれば、内視鏡で取り除けば治療は終わります。

 

膵臓にできた神経内分泌腫瘍も、検診で5ミリや1センチなどの小さい段階で見つかれば、経過を見ながら、大きくならないようならそのまま様子を見ていれば良い場合が多いです。

 

一方で、「NET-G3」または「NEC」と呼ばれるもののように、非常に悪性度の高いものもあります。

 

ですから、神経内分泌腫瘍に対して一概に「非常に大人しい」あるいは「非常に進んでいる」とは言えません。

幅の広い病気なのです。

 

神経内分泌腫瘍の症状とは

神経内分泌腫瘍には、ホルモンを産生して異常な症状を引き起こすタイプ(機能性)ホルモンを産生しないタイプ(非機能性)の大きく2種類にわかれます。

 

ホルモンを産生するタイプで多いのは、膵臓と消化管(とくに小腸や大腸)にできる神経内分泌腫瘍です。

小腸にできる神経内分泌腫瘍の場合、ほてりや下痢、頻脈といった症状が増えることがあります。

 

膵臓にできる神経内分泌腫瘍の場合、出すホルモンによって症状は変わり、たとえばインスリンをたくさん出す神経内分泌腫瘍である「インスリンノーマ」では、血糖値が下がるため、いわゆる低血糖症状が起こります。

具体的には、ふらふらしたり、冷や汗が出たり、さらにひどくなると気を失う、精神錯乱状態になることもあります。

 

また、ガストリンというホルモンをたくさん出す神経内分泌腫瘍もあります。

ガストリンは胃酸の分泌を促すホルモンです。

 

潰瘍を繰り返したり、逆流性食道炎で非常に強い胸焼けがあったり、薬を飲んでも症状が治らなかったりする場合は、神経内分泌腫瘍も疑うべきでしょう。

 

神経内分泌腫瘍(NET)の治療

神経内分泌腫瘍は基本的には大人しい腫瘍なので、手術で取れるのであれば、手術で取り除いて治療は終わりです。

ただ、残念ながら見つかった時点で肝臓をはじめ、別の部位に転移があるなど、手術ができない場合もあります。

 

その場合、術前化学療法(薬物療法で腫瘍を小さくしてから手術を行うこと)も含め、やはり薬物治療が必要になります。

 

一方、放射線療法治療は、神経内分泌腫瘍にはあまり効果がありません。

ただ、「PRRT(放射性核種標識ペプチド療法)」という、新たな放射線治療に期待が寄せられています。

 

これは、放射性物質を含む薬剤を投与することで腫瘍の内側から放射線照射する治療です。

神経内分泌腫瘍の表面には、「ソフトスタチン」というホルモンとくっつく受容体があります。

 

これを利用して、ソフトスタチンに似た物質に放射性物質をくっつけて、放射性物質ごと取り込ませることで、腫瘍の内部から壊すのがPRRTで、欧米を中心に行われています。

 

日本ではまだ保険適応ではありませんが、現在、治験が行われているため、数年後には日本でも可能になるのではないかと期待しています。