歯肉癌から身を守る~大学教授に聞く治療法や予防、クリニック選びのポイント~

歯肉癌は見た目の変化から気づくことが多いですが、痛みを伴わない特徴もあります。今回は、歯肉癌の治療法や予防、クリニック選びのポイントについて、京都大学大学院医学研究所 口腔外科学分野教授の廣田誠先生にお話を伺います。

歯肉癌とは

歯肉癌は、歯茎に生じる悪性のできものです。目に見える場所にできるため、見た目の変化で気づくことが多いです。さまざまな見た目があり、いわゆる「できもの」や「単に白くなっている部分」、「潰瘍などの形」で現れます。しかし、自分では判断が難しいことも多いため、かかりつけの歯科医院で定期的に診てもらうことが重要です。

 

歯肉癌の検査と治療法

診察を受けて歯肉癌が疑われる場合は、組織検査が必要です。米粒ほどの大きさの歯肉を採取し、顕微鏡を使って検査をおこない、確定診断をします。ほかの口腔がん(口の中にできるがん)と同様に、歯肉癌の標準治療は手術です。がんの大きさにかかわらず、手術で切除することが基本となります。がんが小さな場合は、切除して傷口を縫うだけで済むこともありますが、切除の範囲に応じて必要があれば「再建治療」が行われます。再建治療とは、手術によって失われた組織を補う治療方法です。ただし、神経や血管などの機能を完全に再生するのは難しい点があります。

 

歯肉癌の予防策

歯肉癌の原因は大きく分けて遺伝的要因と後天的要因の2つがあります。遺伝的要因として分かりやすいのは家族歴です。家族に歯肉癌だけではなく、食道がんや胃がんなど消化器系のがんがある場合は、遺伝的な要因に気をつける必要があります。後天的要因としては生活習慣が挙げられます。ほかのがんと同様に、お酒とタバコが主なリスクファクターとなります。

 

歯肉癌で特に注意すべき症状

歯肉癌の特徴の1つに、痛みを伴わないことがあります。痛くないからといって安心せず、何かができているのに痛みがない場合は注意しましょう。歯肉癌で1番分かりやすい症状は「できもの」です。歯茎が膨らんできたり、肉のようなものが徐々に大きくなっている場合は気づきやすいでしょう。また、歯磨きで傷つけたり、火傷をした、などの心当たりがないにもかかわらず、傷ができている場合や治らない傷がある場合は、悪性の可能性があるため注意が必要です

 

定期的な診察・検査の重要性

かかりつけの歯科医院をつくり、定期的に診察を受けることは非常に重要です。ある日突然、歯茎の気になる点を伝えられても、歯科医師は通常の状態を診ていないことで異変が分かりにくいことがあります。歯科医師や歯科衛生士などに普段から口の中を診てもらっていれば、わずかな変化に気づきやすくなります。定期的にかかりつけの歯科医院で口の中をチェックしてもらうことは、歯肉癌に限らず、口の中の悪性腫瘍や腫瘍性疾患の予防に大きくつながると思います

 

クリニックの選び方

歯科クリニックを選ぶ際のポイントとしては、歯科口腔外科を標榜しているクリニックを選ぶことです。口腔外科の専門医が定期的に診察をしていることが多く、専門医の指導を受けられる可能性が高いと思います。歯科口腔外科を標榜していても、専門医が診察を行っていないケースもあるため、歯科口腔外科の専門医がいるか事前に確認をすると良いでしょう。また、口腔がん検診を積極的に行っている地域もあります。こういった検診を活用することで、歯肉癌や口腔がんの早期発見につながります。

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