腰椎分離症とは、いわゆる背骨の疲労骨折のことです。
部活動などのスポーツを長時間熱心に行っている青少年が、部活動中に腰痛を訴えた場合、腰の一部分に疲労骨折が起こっていることがあります。
具体的には、腰部の神経の後ろ側に位置する骨に、ヒビが入っています。
『疲労骨折』の場合は、骨に少しヒビが入っている状態で、まだ完全には分かれていません。ずっとヒビが入っている状態が続き、ある日そのヒビから、骨がぽんと割れてしまうことがあります。その状態を『腰椎分離症』と呼んでいます。
高校三年生~大学進学時くらいの青少年に、疾患の起こる転機があるのではないかと考えています。
子どもというのは、基本的に、腰痛は起こしても神経痛は起こしにくいものです。
もしも、子どもが、二週間以上続く腰痛を訴えていたら、注意が必要です。足の痛みや痺れがあったり、あるいは少ししか曲がらないなどの症状があったりする場合は、早急にMRI検査を行った方がよいと考えます。
腰椎分離症の初期の徴候である疲労骨折は、レントゲンで発見することが困難です。
レントゲンで発見されなかった場合、経過観察になったり、骨は心配ないと言われたりすると思います。しかし、これまでの私たちのデータによると、子どもが二週間以上腰痛を訴える場合、小中学生の約半数で、既に腰椎分離症が始まっています。
子どもが二週間腰痛を訴える場合は、打ち身や捻挫だと思わずに、MRIを撮っていただきたいです。
画像診断の種類と、それに対応する腰痛には、以下の図のようにあります。
腰椎分離症において、もっとも大切なのは、MRIのSTIRという撮影法です。STIR像を撮影すれば、初期の腰椎分離症を見落とすことはありません。
分離しているところの内出血や骨の浮腫などを捉えて、早期発見・早期治療を行っていくことが望ましいです。
腰椎分離症の病期は、
・ 最初のヒビ割れが始まる時期
・ 完全に分かれてしまう時期
・ 二度とくっつかず分離してしまう時期
の三つの時期に分けられます。
これから腰椎が分離するという時期にMRIを撮ると、近くの椎弓根が浮腫や内出血を起こしていることが分かります。その時期に見つけられると、硬めのコルセットを着用して、スポーツを三ヶ月休むことで、元通りに骨がつながります。
この時期を我慢し、MRIも撮らずに部活動を続けてしまうと、腰椎が割れます。腰椎が割れてしまうと、骨と骨の間に隙間ができるため、骨の隙間が埋まるのに時間がかかってしまいます。可能であれば、初期に発見し、コルセットでしっかり治すことが一番お勧めです。
もしも腰椎が分かれてしまい、くっつかなくなる場合、骨折による腰痛ではなく、隙間に水が溜まり、滑膜炎による痛みが起こります。これは、痛みのメカニズムが異なりますので、柔らかい装具を用い、スポーツを継続して、炎症を抑える薬を服用するなどの治療を行うことで、炎症が鎮まっていきます。
症状や時期における、痛みのメカニズムに応じた治療を行うべきだと思います。
腰椎分離症においては、骨をつけることももちろん大切ですが、一番大切なのは肉体改造を行うことです。
もし骨がついても、肉体改造を行わなければ、腰椎分離症が再発してしまいます。
腰を動かさず、上部のみを動かす筋力トレーニングを行うことで、分離が完成しても、痛くない分離にすることが可能です。
しっかり肉体改造を行って、またスポーツに復帰していただきたいです。
日本整形外科スポーツ医学会には、スポーツドクターの名簿もあるので、受診の際は参考にしてもよいのではないかと思います。