前十字靭帯損傷の多くはスポーツ外傷によって起こります。
バスケットボールなどジャンプすることが多いスポーツで起こりやすい外傷です。
ジャンプからの着地、方向転換や急停止をする時に発生しやすいと言われています。
また、接触の多いスポーツなどでも起こりやすく、例えば、ラグビーなどで相手に膝を当てられた時に外反することで損傷するケースなどがあります。
前十字靭帯を怪我すると、その瞬間に激痛が走り、さらに「ポン」っという断裂音が聞こえます。
さらに、怪我をして数時間以内に関節が著しく腫れ上がり、靭帯を損傷した時の出血によって膝の中に血がたまって、血腫が形成されます。同時に半月板を損傷していることもあります。
前十字靭帯損傷のほとんどのケースは完全断裂で、膝が非常に不安定になり、歩行や日常生活に支障をきたします。
前十字靭帯損傷を判断する検査の1つにラックマンテストがあります。
仰向けに寝て膝を軽く曲げた状態で、ひざ下を前方に軽く引きます。正常な状態であれば、脛骨は1cm未満しか動かず、引いた時に前十字靭帯によって引きとめられている感覚を触れます。
しかし、前十字靭帯を損傷していると、その引き止めがないため、脛骨が1cm以上引き出されます。
このような手技によって簡易的に前十字靭帯の状態を知ることができます。
詳細に検査する場合は、MRI検査を行います。
前十字靭帯を損傷すると、膝の支えを失うことになるため、非常に不安定な膝になります。
また、スポーツ選手など活動性の高い人が前十字靭帯損傷を放置すると、膝が不安定になることで膝関節を作る軟骨である半月板が損傷してくることがあります。
このため、若くて活動性の高い人がこのような怪我をした場合には、前十字靭帯再建術という手術治療を取ることが一般的です。
活動性の低い人や高齢者には手術ではなく保存的な治療を行うこともあります。
断裂・損傷した前十字靭帯を再建する手術では、靭帯が付いている部分にドリルで穴を開けて腱を通すという手術を行います。
この場合、膝の前にある膝蓋腱の一部を取ってきて前十字靭帯として移植する、という再建術が一般的です。
また、膝の裏にある屈筋腱の一部を特殊な機械で抜き取ってきて移植する場合もあります。
再建術では、傷口を小さくして患者の負担を減らすような関節鏡視下手術という方法が取られます。
これは、手術による傷が小さいため、手術後早期からリハビリをすることが可能であるということに加え、関節鏡で術野を見るため、肉眼で見るよりも仔細に観察でき、正確で丁寧な手術ができるというメリットがあります。
過去には、怪我前よりも可動域が狭くなるような場所に再建するのが一般的でしたが、関節鏡視下手術のような、新しい手術方法の開発によって、解剖学的に正しい位置に再建できるようになりました。
再建術の中でも、日本では、二重束ACL(前十字靭帯)再建術が一般的に行われています。
正常では一本の前十字靭帯ですが、再建する際には、移植腱を2本、クロスさせた束を止めるという方法です。
これは、機能的な膝を回復するために非常に有効な再建術とされています。
前十字靭帯損傷の再建術は、手術をする医師によって可能なレパートリーが異なります。
まずは、主治医と自分の膝の状態をよく相談し、最適な治療法、再建術を選択しましょう。