肺移植とは

重度の肺の病気で、薬物治療を行ってもなかなか良くならず、息苦しさが続く――。そこで選択肢として挙がるのが、肺移植です。 肺移植には、脳死肺移植と生体肺移植の2種類がありますが、日本は欧米とはまったく状況が異なります。日本で初めて生体肺移植を成功させた、京都大学医学部附属病院 呼吸器外科の伊達洋至先生に話をうかがいました。

肺移植が必要な患者さんとは

肺移植の適応となるのは、良性の肺疾患です。つまり、肺がん(肺の悪性腫瘍)は適応外です。

 

具体的には、間質性肺炎や肺動脈性肺高血圧症、肺気腫、閉塞性細気管支炎、気管支拡張症などの良性の肺疾患で、

 

①薬物治療を行っても呼吸が苦しく、肺移植のほかに有効な治療法がない

②余命が限られている(2年生存率が50%以下)

③肺移植を行うことで元気になると予想される

 

という条件を満たす場合、肺移植の適応となります。

 

ただし、日本では、ドナー(臓器提供者)が少ないため、脳死肺移植を受けられるのは、片肺移植の場合は60歳未満、両肺移植の場合は55歳未満と限られています。

 

肺移植には2種類ある

肺移植には、「脳死肺移植」「生体肺移植」の2種類があります。

このうち、脳死状態の方から“命の贈り物”として肺をいただく脳死肺移植のほうが標準的な方法です。

 

ただ、現在、日本で脳死肺移植を待っている人は330名ほどいらっしゃいますが、実際に脳死肺移植を受けられる方は年間50名ほどしかいません。

そのため、待っている間に病気が進み、肺移植を受けることなく亡くなってしまう方が多いのです。

 

そうした現実があるため、ご家族にドナーになれる方が複数いらっしゃる場合の選択肢として、生体肺移植という方法があります。

これは、2人の方の肺の一部分をいただいて、患者さんに移植する方法です。

 

欧米では98%以上が脳死肺移植ですが、日本では脳死ドナーの数が少なく、生体肺移植が35%ほどを占めています。

欧米に比べて、生体肺移植の比率が高いのです。

 

脳死肺移植と生体肺移植の違い

 

脳死肺移植の場合、脳死状態になった方から肺をすべていただけます。

一方、生体肺移植では、一人のドナーの方から右肺の下葉を、もう一人のドナーの方から左肺の下葉をいただくのが一般的です。

 

肺は5つの肺葉でできているので、5分の1ずついただくわけです。

そして患者さん自身の肺はすべて取り出し、ドナーの方に提供してもらった肺を移植するのが、標準的な生体肺移植の方法です。

 

ただし最近では、ご本人の肺の一部を残したり、右の肺を左の肺にひっくり返して移植したり、いろいろな方法が開発されています。

いずれにしても、生体肺移植は、脳死肺移植に比べると、提供される肺が小さくなります。

 

一方で、近親者からの提供なので、もしかしたら拒絶反応は少ないかもしれません。

 

このように、脳死肺移植と生体肺移植にはそれぞれに良い面、悪い面があります。

 

とはいえ、あくまでも肺移植の基本は、脳死肺移植です。

生体肺移植では、二人の健康な方にメスを入れるわけですから、ドナーに大きな負担がかかります。

 

ですから、生体肺移植は脳死肺移植を待てない方の緊急避難的な位置づけになっています。