尿路感染症の治療は、上部尿路感染症か、下部尿路感染症かで、選択する方法が異なります。
膀胱炎のような下部尿路感染症の治療では、主な原因菌である大腸菌に効果のある抗生物質を内服します。
一方、腎盂腎炎のような上部尿路感染症では、1週間程度の入院の上、抗生物質の点滴が必要となります。
さらに、膀胱に造影剤を注入して、尿の逆流や流れなどを確認するためのレントゲン検査を行います。
これによって、先天性腎尿路異常がないかどうかを確認します。
上部尿路感染症を起こした人の3人に1人が先天性腎尿路異常を持っていると言われているため、この検査は非常に重要です。
上部尿路感染症を起こした小児のうち、先天性腎尿路異常が見つかった場合は、複雑性尿路感染症と呼びます。
このような小児に対しては、上部尿路感染症を繰り返さないようにするため、少量の抗生物質(およそ風邪で服用する量の10分の1程度)を、1年程度、毎日予防的に服薬する場合があります。
そして、服薬を続けて1年が経過した頃に、腎臓や膀胱の超音波検査・レントゲン検査を行い、尿の流れを再度確認し、抗生物質の投与を続けるか止めるかを判断します。
一般的に、先天性腎尿路異常のある小児の中でも70%程度は、小学校入学までに、尿の流れは改善されます。
上部尿路感染症にかかった場合は、腎臓の働きを悪くさせないために、早期診断と早期治療が非常に重要です。
したがって、子どもが「その他の風邪症状を伴わない、突然の高熱」を出した場合には、24時間以内に近隣のかかりつけ医を受診するのが一つの目安となります。
また、尿の色が黄色い、臭いがきつい、頻尿の様子や排尿痛の訴えがあった場合などには、下部尿路感染症が疑われます。
このような症状のことを膀胱刺激症状と言いますが、これらの症状が見られた場合には、まず自宅で水分摂取を十分に行い、尿の排泄を促してあげてください。
尿が排泄されることで、尿路に侵入した細菌や異物もいっしょに排泄することができます。
膀胱刺激症状を訴え始めてから1日から2日経過しても症状が改善されない場合には、かかりつけの小児科医を受診して、尿検査を受けた上で抗生物質の処方を受けると良いでしょう。
尿路感染症は、尿路のどこかで尿の流れが滞ってしまうことで、細菌が繁殖する土壌となって引き起こされます。
つまり、尿を我慢したり、水分の摂取量が少ないと、尿の流れを止めてしまうことになります。
尿路感染症を防ぐには、まずは尿意を感じたら我慢しないこと、水分補給をこまめに行うことが重要です。
特に小さい子どもの場合、尿意を感じてもすぐに言わないことがあります。
日頃から「トイレに行きたい時は我慢しないですぐに言ってね」など、声かけをしておくと良いでしょう。
入浴時に外陰部をよく洗うことも大切です。
また、乳児の尿路感染症のほとんどは、便に含まれる大腸菌が外尿道口から侵入することで起こります。
これを防ぐためには、便が排泄されたらすぐにオムツを交換することと、お尻を拭く時は「前から後へ」拭きあげることが大切です。
便秘のある子どもの場合は、食生活の改善や薬剤による治療も、尿路感染症予防の意味では重要です。