性腺とは、男性でいえば精巣(睾丸)、女性でいえば卵巣にあたる臓器です。
これらの働きが低下してしまうのが「性腺機能障害」です。
特に女性の場合、若いうちに性腺機能障害に至るケースを「早発卵巣不全(POI)」と言います。
POIでは、女性ホルモンが出なくなることによって、月経不順・更年期障害の様な症状が起こります。
性腺機能障害が長期間続くと、骨粗鬆症や脂質(コレステロール)の代謝異常が起こってきます。
さらに、卵子の数が減少することで、治療困難な不妊症を来す可能性もあります。
早発卵巣不全の原因としては、先天的な染色体・遺伝子の異常、後天的な原因によって卵巣の機能が弱くなることなどが挙げられます。
後天的な原因としては、抗がん剤の服用や下腹部への放射線照射(がん治療)などがあります。
また、抗がん剤の中では、白血病やリンパ腫、乳がんで使われる薬が、卵巣機能を低下させる治療薬として知られています。
最も有名なのは「アルキル化剤」と呼ばれるタイプの抗がん剤です。
他にも、卵巣に対して毒性のある薬剤は多く存在します。
薬剤の量や投与回数、治療を受けた時の患者さんの年齢、治療時の卵巣の状態によって、薬剤からの影響には個人差があります。
施設間や診療科間での連携はもちろん、その他様々なタイプの医療連携を通して、患者さんが自ら意思決定することのできるような支援が重要です。
特に、若年がん患者さんの生殖機能に関する支援は、がん治療の現場だけで解決することは不可能です。
岐阜県では「岐阜県がん生殖医療ネットワーク」というネットワークを構築しています。
このネットワークの中で岐阜大学は、岐阜大学内のがんセンターにある「がん・生殖医療相談」という外来を通じて、患者さんへの情報提供や意思決定支援を行なっています。
妊孕性温存には高額な医療費がかかりますが、負担をいかに軽減させるかは非常に重要です。
これを解決するため、全国で助成金制度が始まっています。
一方、妊孕性温存をしてがん治療を行えば、子どもをすぐに授かることが出来るわけではありません。
この点を患者さんやそのご家族が十分に理解することが重要です。
また、若いがん患者さんの場合は、凍結していた卵子・精子の年単位の保存による管理費が必要です。
「病気の状態が悪化した時に凍結する細胞をどうするか」といった倫理的・社会的問題は、まだ多く残っています。