カテーテルを用いて、詰まっている冠動脈(心臓を栄養する、心臓の周囲にまとわりついている血管)の中に血栓を溶かすような薬を注入します。
これを「血栓溶解療法」と言います。
近年は、カテーテルを用いて「ステント」と呼ばれる金網状の管を血管内に留置することで、血流を確保するという治療が主流となっています。
また、頻度は少ないですが、静脈から血栓溶解剤を注入する治療方法もあります。
菊名記念病院では、年間300件程度のPCI(経皮的冠動脈形成術)治療を行っています。
心筋梗塞患者に対しては、年間50~60例程度の実施です。
具体的には、手首を局所麻酔して、そこの血管から2mm程度の細い管を挿入します。
この管を末梢の動脈から心臓の冠動脈まで到達させ、冠動脈の入り口で造影剤を注入し、血管の造影を行います。
これによって、冠動脈のどの部分で狭窄や閉塞が起こっているのか、枝分かれはないかなどを確認することが出来ます。
PCIの場合、造影剤とともにバルーンを挿入しているので、造影で血管の詰まっている箇所を確認しながら、適切な場所でバルーンを拡張させて血管を開通させます。
ただし、バルーン拡張で開通させただけでは一時的なものであるため、広げたところに金属の丈夫なステントを留置することで再発を防ぎます。
腎臓の疾患を持っている人の場合、造影剤によって腎臓の働きが悪化してしまう可能性があるため、実施には注意が必要となります。
したがって、造影剤を用いた診断や治療を行う際には、腎臓の疾患の有無を聞き取ることが重要です。
ただし、心筋梗塞などの心臓の急性疾患の方が致命的であることが多いため、腎臓の疾患について検討するよりも、心臓の治療を優先して行うほうが良いことはあります。
PCIを実施する時の合併症で最も多いのは、針や管を挿入することで生じる皮下出血です。
手首からではなく、足の付け根(鼠蹊部)から太い管を挿入した後にも出血が見られることがあります。
また、造影剤に対するアレルギー反応でショックを起こしたり、先程述べたような腎臓疾患を持った人で起こりやすい腎障害なども合併症として挙げられます。
心筋梗塞の場合は、その病気自体で亡くなる人が圧倒的に多いため、合併症に注意を払う必要はありますが、心臓の治療を優先することが重要です。