肺非結核性抗酸菌症とは

呼吸器系の病気の中で最近増加傾向にあるのが、肺非結核性抗酸菌症(以下肺NTM症と略します)です。 これは、結核と同じ抗酸菌が原因で起こる病気であり、結核と似たような症状を呈します。 今回は、この肺NTM症について、公益財団法人肺結核予防会複十字病院呼吸器センター 森本 耕三先生に教えていただきました。

 

肺NTM症にかかっているひとはどのくらいいるのか

 

 

肺NTM症の患者数について、2014年の報告では新たに感染した人の数は、人口10万人あたり14.7人の新規発症を認めました。

現在治療中の方たちを含めると、2019年の推定では10万人あたり179人、全体数にすると21万人を超えると推定されています。

 

肺MAC症は人口の多い関東が多いものの、10万人当たりの患者数は西日本に行くにしたがって高い値を示しています。

 

日本における肺NTM症罹患率の年次推移

 

地域差に関しては、肺カンゼシ症は近畿地方で、肺アブセッサス症は九州・沖縄地方で患者が多いという結果がでています。

 

 

肺NTM症にかかりやすい人の特徴

 

 

一つの原因でなく、複数の要因が影響して、肺NTM症は発症します。

に結核後遺症やCOPD(慢性肺塞栓症)など基礎疾患を持っている方や、薬物治療による免疫力の低下がある方はかかりやすいと言われています。

最も多いのは、中高年のやせ型の女性です。

原因ははっきりしていませんが、性ホルモン脂肪ホルモンの影響があるのではないかと言われています。

 

 

肺NTM症の感染源

 

 

前述したリスクの高い方が環境から感染することで、肺NTMを発症します。

NTM菌は、通常の環境(特に土壌や水回り)に多く存在します。

特に曝露が多くなる活動、ガーデニング入浴などからNTM菌に曝露されることで、感染につながります。

 

NTMは環境常在菌のため、完全に暴露を防ぐのは難しいのですが、高曝露となる場面を避けることが重要になってきます。

ガーデニングの際は、マスクを着用したり、土ぼこりをたてないような工夫をする。

お風呂場は乾燥を十分にして、清潔を保つ追い炊きを避ける、などを意識するとよいでしょう。

 

発症に関わるNTM曝露と宿主感受性の相互関係

 

 

肺NTM症の症状

 

 

肺NTMは病状の進行度合いによって、幅広い症状がみられます。

出てくる主な症状としては、咳、痰、血痰などがあり、さらに進むと、倦怠感、体重減少、発熱などの症状がでてきます。

日本では症状がない状態での健診発見例が多いですが、有症状の場合は、空洞などの破壊性病変を認める割合が高くなります。

 

 

肺NTM症の検査・診断

 

 

まず、レントゲン・CTなどの画像検査で肺NTM症に矛盾しない画像所見がないか確認し、その後、喀痰検査を繰り返します。

喀痰検査で肺NTM症を引き起こす菌を二回確認することで確定診断となります。

 

喀痰検査が難しい場合、内視鏡検査を行います。

こちらは一回確認すれば、確定診断として良いことになっています。

 

 

結核と肺NTM症の違い

 

 

結核と肺NTMは、どちらも抗酸菌によって引き起こされる病気です。

肺NTMはヒトからヒトへの感染はありませんが、結核はヒトからヒトへ感染するため、日本では感染症法に基づき、隔離入院という手法を取ります。

 

 

 

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