肺非結核性抗酸菌症の治療について

肺非結核性抗酸菌症(以下肺NTM症と略します)は、様々な症状を呈します。 症状に合わせて治療を行っていくことが必要になってきます。 今回は、この肺NTM症の治療について、公益財団法人肺結核予防会複十字病院呼吸器センター 森本 耕三先生に教えていただきました。

 

複十字病院における来院患者の特徴と傾向

 

 

複十字病院は抗酸菌治療の専門病院のため、多数の患者様が紹介で来院されます。

多くは関東地方から来院されていますが、中には遠方の方もいます。

 

患者さまの6割はすでに診断済みであったり、治療に難渋している方、4割は健康診断で指摘された無症状の方となっています。

 

 

治療法の選択

 

 

症状によって、治療法は様々です。

無症状で喀痰検査で検出される菌量が少なく、画像所見も軽度の場合、治療せず、数か月に一回の経過観察とします。

治療が必要、と判断した場合には、リファンピシンエタンブトール(結核治療薬)クラリスロマイシン(抗菌薬)の3剤を併用して投与します。

進行の度合いを見極めて、治療導入が遅れないようにしています。

 

 

薬物療法とその副作用

 

 

リファンピシンでは肝機能の低下、エタンブトールでは視力の低下下肢のしびれ、クラリスロマイシンでは味覚障害消化器症状副作用として出現することがあります。

副作用の程度と種類によっては、それに対応する薬剤を追加したり、治療薬の量の調整が必要となることがあります。

 

 

治療強化について

 

 

複十字病院には、副作用が強くて治療が継続できなかったり、治療しても病状が進行してしまうなどの、難渋例が紹介されてきます。

そういう患者さんに対しては、治療強化を計画します。

 

具体的には、内服薬に加え、点滴薬の投与を行ったり、手術療法の適用となるかを外科のチームと協力して治療方針を決定したりします。

内科治療の強化と合わせて手術療法は行っている施設は多くはありません。

特に、手術療法は難易度が高いため、経験豊富な施設で行われることが望ましいと考えています。

 

 

肺NTM症の手術療法

 

 

空洞があったり、強い気管支拡張があるなど、症状によっては化学療法を行っても菌の排除が困難なことがあります。

そういった化学療法を開始しても反応が十分でない場合は、手術療法を検討します。

 

手術療法によって、強い破壊性病変を取り除き、化学療法の効果を高めます。

この手術は難易度が高く、高い専門性が必要となっています。

 

治療に際しては、入院となることもあります。

入院を提案されたということは、強化治療を含めた集学的治療を行う必要がある、と判断された、ということになります。

入院が大変ということはよくわかりますが、肺NTM症と戦う重要な時期であり、しっかりと向き合う準備・心構えをしておくことが大切だと考えています。

 

 

 

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森本 耕三 先生
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