深部静脈血栓症の予後:カテーテル治療の効果は?再発リスクは?

カテーテル治療
深部静脈血栓症は、静脈に血栓ができることで、様々な症状を引き起こし、他の疾患にもつながる病気です。治療方法の中心は薬物療法であり、症状が強い場合にはカテーテル治療も行われています。今回は深部静脈血栓症の予後について、カテーテル血栓溶解療法の治療成績や再発のリスクなども含めて、桑名市総合医療センターの山田 典一先生に教えていただきました。

 

カテーテル血栓溶解療法(CDT)の治療成績:早期発見で十分な回復が期待できる

 

 

早期に症状に気付いて病院へ訪れた患者さんであれば、血栓ができてから早期の状態でカテーテル治療ができます。

そのような場合、大量の血栓であっても、きれいに溶けてくれます。

 

100%の血栓が溶けてくれることはあまり多くありませんが、静脈の還流が十分に回復する程度には回復すると言われています。

このような症例は、6割から7割に上ります。

 

 

CaVenT study

 

 

カテーテル血栓溶解療法は、患者さんの「足が痛い」と言う症状を比較的短期間で改善させることができる治療法です。

抗凝固薬のみを使って治療した患者さんと比べると、カテーテル血栓溶解療法の場合、血栓後症候群と呼ばれる症状がかなり抑制できています。

 

これは、弁が破壊されることによって、「慢性的に足が腫れたり痛みが持続したりする」といった症状がおこるものです。

実際に臨床治療を行っていると、抗凝固薬だけで治療した患者さんよりも、カテーテル血栓溶解療法を行なった患者さんの方が、早く血栓が溶けて、症状も早く無くなり、慢性期の後遺症抑制ができていると実感します。

 

 

再発リスクについて:抗凝固薬の継続投与が必要、リスク因子の無い患者が要注意

 

 

再発リスクに応じた抗凝固療法継続期間

 

 

再発予防のためには、抗凝固薬療法を一定期間継続しなければなりません。

深部静脈血栓症も、肺塞栓症も、最低3ヶ月は抗凝固療法を続ける必要があります。

 

活動性のがんを患っている患者さんや、「血栓性素因」と呼ばれる、血液が固まりやすい体質を持っている方など、リスクが持続するような患者さんに対しては、抗凝固療法を延長して継続します。

特に要注意なのは、血栓のリスクが何もないのに血栓を起こした、と言う患者さんです。

そのような患者さんの場合、抗凝固療法を止めてしまうと再発してくるリスクが高いと言われています。

このような症例では、抗凝固療法を止めると、年間大体8%強の割合で再発するというデータがあります。

 

 

今後の深部静脈血栓症(DVT)治療に期待すること:吸引式のカテーテル治療に期待大

 

 

深部静脈血栓症の治療で最も多く行われるのは薬物療法です。

近年使用できるようになった新しい抗凝固薬は、有効性と安全性重症度の高い薬なので、これらが中心となって多く使用されていくと思われます。

 

血栓量の多い患者さんの場合、新しい血栓はそれほど固くないので、吸引による治療が期待されます。

吸引できるカテーテルが日本でも使えるようになれば、形成された血栓を吸い取って、そこに血栓溶解薬を吹き付ける、といった治療法が可能になります。

これによって、治療期間が短縮できる可能性が高くなり、さらに投与する血栓溶解薬の用量が少なくて済むと予想されるので、出血リスクもさらに低減すると考えられます。

 

 

病院選びのポイント:症例の多い病院がベター

 

 

深部静脈血栓症のカテーテル治療は、日本のどこでもできる治療法ではありません。

血管外科や循環器内科の中でも特に静脈系の病気に関心を持っており、たくさんの患者さんを診療されているような施設病院が良いと思われます。

 

深部静脈血栓症のカテーテル治療は少しずつ広まりつつありますが、限られた施設でしかまだ行っていないのが実情です。

病院の診療科のホームページをきちんと見て、深部静脈血栓症に対するカテーテル治療を行っている記載があることを確認した上で、受診することを考えるのが良いのではないでしょうか。

 

 

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