夜尿症とは「夜、寝ている間に意識なく尿が漏れてしまう症状」を指します。
「5歳の誕生日を過ぎても夜尿が改善しない」または「1ヶ月に1回以上の夜尿が3ヶ月以上続くこと」が診断の前提です。
これに当てはまる子どもは、5歳児であれば20%程度おり、特別に治療をしなくても年齢と共に改善していく人もいます。
小学校に入学した段階では、15%程度で夜尿症が見られます。
治療を始めるのはこの辺りの年齢からだと考えられています。
中学生になっても夜尿症が改善しない人は1%程度います。
小児科で診られる年齢は15歳(中学3年生)までなので、5~15歳の範囲を平均化すると、6.4%の割合で夜尿症が見られます。
アレルギーに次いで多い、小児科領域の慢性の「疾患」と言えるでしょう。
夜尿症の原因としては、例えば腎臓の疾患があったり、自律神経が上手く働かないことなどが挙げられます。
また、頻度はとても少ないですが、糖尿病が夜尿症の原因となっているケースもあります。
尿の濃さを決めるホルモンは、脳の下垂体という部分から分泌されています。
そのため、脳腫瘍があったり、先天的に下垂体の働きが悪くホルモンが分泌されていない場合などにも夜尿症になることがあります。
このような基礎疾患によって夜尿症を来している人は20人に1人いるかいないか程度であり、95%の夜尿症の患者さんには基礎疾患はありません。
通常寝ている間は、「抗利尿ホルモン(バソプレシン)」と呼ばれる、尿を濃縮して量を減らすホルモンが多く分泌されます。
このような昼・夜でのホルモン分泌量の変動は「日内リズム」と言い、4~5歳頃には安定します。
日内リズムが安定せず、夜間の抗利尿ホルモンの調節が上手く行っていないケースが、70%程度と言われています。
また就寝中、尿を溜める場所である膀胱はリラックスしており、昼間よりもたくさんの尿を溜められるようになっていますが、「過活動膀胱」と呼ばれる人の場合、尿を溜めることが上手くできません。
これは、膀胱の筋肉が過剰に緊張しているため、溜められずにすぐ排出してしまいます。
このようなケースは夜尿症の50%程度で見られます。
ただし、どんなに尿量が多く、膀胱に尿が溜められないケースであっても、起きてトイレに行けば夜尿症とはなりません。
問題となるのは、尿意で目が覚めずに漏れても気づくことのできないケースで、これは睡眠と覚醒のサイクルが未熟な状態と言えます。
このようなポイントが絡み合って、夜尿症になっている人が95%以上であると言われています。
夜尿症の診療では、併存症の存在に留意する必要があります。
例えば、小学生では4%程度ADHD(注意欠如・多動症)の患者さんがいます。
また、慢性の便秘など排便障害が、夜尿症という排尿障害につながっていることもあります。