夜尿症の診断に必要な最低限の検査は、尿検査です。
早朝尿を提出して、どの程度濃縮された尿が作られているのかを調べます。
夜尿症の原因は尿を濃縮しているホルモンの分泌異常である場合があるためです。
血尿や蛋白尿を伴っている場合であれば、腎臓疾患が隠れている可能性があるため、さらなる精査が必要となります。
また、尿中に細菌や白血球が見られる場合は、慢性的な尿路感染症の疑いがあります。
腎臓疾患や尿路感染症が、夜尿症という排尿障害の原因になっている可能性があるため、重大な疾患を見逃さないためにも、尿検査は非常に重要です。
さらに可能であれば血液検査を行い、腎機能障害が無いかどうかを調べます。
夜尿症だけでなく、昼間にも尿失禁がある患者さんの場合は、膀胱に障害があったり、先天性の腎臓形態異常が可能性としてあるため、腹部の超音波検査も行います。
この時、腸管も同時に見ることが出来るため、便秘のスクリーニングにも有用です。
夜尿症の治療は、日常生活の見直しから始まります。
通常、人は水分を摂取すると大体2時間後に尿が出ます。
寝る時間が決まっているのであれば、就寝2時間前からなるべく水分は摂らないことが指導されます。
また、就寝前には必ずトイレに行って、膀胱の中に溜まっている尿を出来るだけ排出しておくことも大切なポイントです。
特に冬の間は冷え込むため、尿量が多くなり、排尿頻度も増えるため、注意が必要です。
1割弱の患者さんは、上記のような生活ポイントを見直すだけで改善します。
残りの9割の人は生活指導以外にも、薬物療法を併用して治療を進めます。
夜尿症の薬物療法では、抗利尿ホルモン(尿を濃縮するために下垂体から分泌される)と同じ働きをする薬を服用します。
抗利尿ホルモンで非常に高い効果が見られる人が60~70%程度です。
また「抗コリン薬」とよばれる、膀胱をリラックスさせる薬も用いられます。
これによって、夜間に膀胱にたくさんの尿を溜められるようになり、治療効果が得られます。
抗コリン薬が著効するのは20~30%程度の患者さんです。
さらに、「夜尿アラーム療法」と呼ばれる治療法があります。
パンツにセンサーをつけることで、失禁した時にブザーが鳴り、気づくと尿を堪える姿勢を取ることが出来る、という仕組みです。
アラームの鳴る時間が真夜中から明け方へと徐々に遅い時間にずれていって、朝まで失禁することなく過ごせるようになることを目指します。
患者さんが低年齢の場合は、保護者が方向性を決めて、治療を継続できるように環境を整えてあげることが重要です。
小学校高学年~中学生になっても夜尿症が改善されない患者さんでは、本人の意志を尊重して治療方針を決めることが大切です。
薬を正しく服用できているか、アラーム治療は行えているかなどを、家族がチェックしてアドバイスしてあげることになります。