TEESの適用は、顕微鏡を用いた手術の適用とほとんど重なっています。
具体的には、鼓膜に穴が開いた「穿孔性中耳炎」、「慢性中耳炎」や「真珠腫」といった骨を破壊する疾患、「耳硬化症」という音が聞こえなくなる疾患などが挙げられます。
真珠腫に関しては、7割以上の患者が内視鏡手術のみで治療が完遂できます。
真珠腫、中耳腫瘍の進行例を除けば、ほとんど全ての疾患がTEESの適用です。
TEESでは、耳の穴の中で切開するため、外から見える傷はない状態で手術をすることが可能です。
たとえば、今までの手術方法では、「髪を挙げた時に手術痕を見られる」といった、心理的負担がありましたが、TEESの場合はそのような心配はありません。
また、痛みも少なく、術後の鎮痛剤服用もごく少量で済む程度です。
従来の抜糸が必要な手術については、術後1週間ほど入院が必要でしたが、内視鏡手術の場合、4~5日程度の入院で十分で、希望があれば手術の翌々日に退院も可能です。
ほとんどの手術では、パッキング(ガーゼ圧迫留置)を行います。
これは、自然に溶けていく素材を用いるので、1~2週間経過すれば自然になくなります。
ただし、その間は聴力低下が見られます。
接着法(湯浅法)と呼ばれる手法であれば、顕微鏡/内視鏡に関わらず、パッキングは不要ですので、手術直後から聴力は回復します。
内視鏡の登場によって耳科手術は飛躍的に進歩しましたが、内視鏡によって全てが解決するわけではありません。
耳の奥まで病変が進展している場合は、耳の中は内視鏡で、後は顕微鏡(外視鏡)という2つのアプローチで手術を行います。
これを「デュアルアプローチ」と言い、より確実に手術が行えることが報告されています。
しかし、病変を綺麗に取り除くことができても、同じような病態が残っていれば、再発する可能性があります。
このような点を予防するために、様々な方法が考案されていますが、まだまだ開発途上です。
術式に見合った機器の開発も、治療の進歩には必要不可欠です。
視野上は病変が見えていても、機械が届かないということが起こると、正確な手術は困難となります。
泌尿器やその他の内臓疾患では、ロボット手術がすでに用いられていますが、これがミニチュア化して耳の中でも使えるようになれば、大きなブレイクスルーとなるでしょう。