TEES(経外耳道的内視鏡下耳科手術)とは?適用や今後の課題

耳科手術は、1950年代に顕微鏡を用いた術式の発明によって飛躍的に進歩した後、50年ほどは変化のない時代が続きました。そして1990年に内視鏡が登場し、微細かつ精緻な耳の構造に合わせた、繊細な手術が可能となりました。 今回は、TEES(経外耳道的内視鏡下耳科手術)について、その概要や適用、メリットなどについて、山形大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・教授の欠畑 誠治先生に教えていただきました。

 

TEES(経外耳道的内視鏡下耳科手術)の適用:ほとんど全ての疾患が対象に

 

 

TEESの適用は、顕微鏡を用いた手術の適用とほとんど重なっています。

具体的には、鼓膜に穴が開いた「穿孔性中耳炎」「慢性中耳炎」「真珠腫」といった骨を破壊する疾患、「耳硬化症」という音が聞こえなくなる疾患などが挙げられます。

真珠腫に関しては、7割以上の患者が内視鏡手術のみで治療が完遂できます。

 

真珠腫、中耳腫瘍の進行例を除けば、ほとんど全ての疾患がTEESの適用です。

 

 

TEESのメリットについて:低侵襲で、痛みが少ない。手術後3日で退院も可能

 

 

TEESでは、耳の穴の中で切開するため、外から見える傷はない状態で手術をすることが可能です。

たとえば、今までの手術方法では、「髪を挙げた時に手術痕を見られる」といった、心理的負担がありましたが、TEESの場合はそのような心配はありません。

また、痛みも少なく、術後の鎮痛剤服用もごく少量で済む程度です。

 

従来の抜糸が必要な手術については、術後1週間ほど入院が必要でしたが、内視鏡手術の場合、4~5日程度の入院で十分で、希望があれば手術の翌々日に退院も可能です。

 

 

聴力の回復について:術後一時的に聴力低下はあり、経過観察で元戻りに

 

 

ほとんどの手術では、パッキング(ガーゼ圧迫留置)を行います。

これは、自然に溶けていく素材を用いるので、1~2週間経過すれば自然になくなります。

ただし、その間は聴力低下が見られます。

 

接着法(湯浅法)と呼ばれる手法であれば、顕微鏡/内視鏡に関わらず、パッキングは不要ですので、手術直後から聴力は回復します。

 

 

TEESの今後の課題:再発の防止や術式に見合った機器の開発が課題に

 

 

内視鏡の登場によって耳科手術は飛躍的に進歩しましたが、内視鏡によって全てが解決するわけではありません。

 

耳の奥まで病変が進展している場合は、耳の中は内視鏡で、後は顕微鏡(外視鏡)という2つのアプローチで手術を行います。

これを「デュアルアプローチ」と言い、より確実に手術が行えることが報告されています。

 

顕微鏡手術と内視鏡手術(デュアルアプローチ)

 

 

しかし、病変を綺麗に取り除くことができても、同じような病態が残っていれば、再発する可能性があります。

このような点を予防するために、様々な方法が考案されていますが、まだまだ開発途上です。

 

術式に見合った機器の開発も、治療の進歩には必要不可欠です。

視野上は病変が見えていても、機械が届かないということが起こると、正確な手術は困難となります。

泌尿器やその他の内臓疾患では、ロボット手術がすでに用いられていますが、これがミニチュア化して耳の中でも使えるようになれば、大きなブレイクスルーとなるでしょう。

 

 

 

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