細胞の小器官であるライソゾーム(リソソーム:lysosom)は、細胞内の消化管としてその中にあるたくさんの酵素を使い脂質・糖質・タンパク質を分解しています。
ライソゾーム病はこの酵素が遺伝的に欠損していることで起こる疾患群です。
このような疾患群であるライソゾーム病では、分解できなかった特殊な物質がライソゾーム内に溜まることから、肝臓や脾臓が肥大したり骨や脳が障害を起こしたりします。
ライソゾーム病は様々な症状が出てくる疾患群として知られ、約60種類の疾患にわかれます。
罹患率は約六千人に1人の割合です。
そのなかで一番多いライソゾーム病がファブリー病です。
ファブリーは、ライソゾーム内に分解できなかった脂質が溜まって起こる病気です。
それから二番目に多いのがムコ多糖症Ⅱ型です。
ムコ多糖症Ⅱ型は、デルマタン硫酸・ヘパラン硫酸というムコ多糖が肝臓や脾臓、時には脳にも溜まり脳障害を起こす疾患です。
またムコ多糖症Ⅱ型の場合、これらが全身に溜まってくると当然ながら骨にも溜まるので、背が伸びず低身長になります。
ムコ多糖症の罹患率は約10万人に1人の割合になっています。
日本人でムコ多糖症Ⅱ型の治療を受けている患者さんは150人位います。
ムコ多糖症Ⅱ型の治療法は酵素補充療法です。(このほかに日本ではⅠ型・Ⅳ型・Ⅵ型で補充療法が使われます)
現在、ムコ多糖症Ⅰ型で治療されている患者さんは40人くらいいます。
ところがムコ多糖症Ⅲには治療法がありません。
デルマタン硫酸は皮膚や軟骨などいろいろな所に含まれているムコ多糖
ヘパラン硫酸は肝臓・脾臓・脳に含まれているムコ多糖
デルマタン硫酸やヘパラン硫酸が分解されないと、骨に症状が出たり肝臓や脾臓が肥大したりするので、それらの機能に障害が起きます。
・Ⅰ型治療薬ラロニターゼ・アウトドアラザイム・Ⅱ型治療薬アイドロサルファーゼ・エラプレーズ・Ⅳ型治療薬ナグラザイム・Ⅵ型治療薬ピミジム
現在ムコ多糖症には7種類あることがわかっています。
それぞれのムコ多糖症でどのような酵素が遺伝的に欠損しているか発見されています。
・ムコ多糖症Ⅰ型⇒イズロン酸を切るα-L-イズロターゼ酵素の欠損・ムコ多糖症Ⅱ型⇒イズロサルファターゼイズロン酸の硫酸基を外すイズロン酸-2-スルファターゼ
酵素の欠損・ムコ多糖症Ⅲ型⇒a-N-アセチルグルグルコサミニダーの酵素など(Ⅲ型にはA・B・C・Dの型があり、それぞれの酵素が違う)・ムコ多糖症Ⅳ型⇒N-アセチルグルコサミンの硫酸基を切るN-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ酵素の欠損・ムコ多糖症Ⅵ型⇒N-アセチルグルコサミンの硫酸基を切るN-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ酵素酵素の欠損・ムコ多糖症Ⅶ型⇒β-グルクロニダーゼ酵素の欠損・ムコ多糖症Ⅸ⇒ ヒアルロニダーゼ酵素の欠損
このようにムコ多糖症には、疾患によって欠損している酵素が違い、それぞれの症状が異なります。
ライソゾーム病は希少疾患のひとつで、患者さんが少ないことから酵素補充量治療と造血幹細胞移植の治療しかありません。
ライソゾーム病は指定難病ですので、ライソゾームを専門とする医師がいる施設で治療することが大切です。