先天性心疾患 重症大動脈弁狭窄症

出生直後の赤ちゃんの生命予後を左右する、先天性の重症大動脈弁狭窄症。 全身に血液を送るポンプとして重要な役割を持つ心臓の先天性疾患は、胎児期からの診断・治療方針の決定が重要です。 今回は、先天性の重症大動脈弁狭窄症について、国立成育医療研究センター副院長であり、周産期・母性診療センターのセンター長でもある、左合 治彦先生にお話を伺いました。

 

重症大動脈弁狭窄症とは?

 

 

心臓は左右の心室と心房、4つの部屋で構成されており、この4つの部屋が収縮・拡張を繰り返すことで、心臓から全身へポンプのように血液を送り出しています。

4つの部屋には逆流が生じないよう弁がついています。

 

大動脈弁は、心臓の最後の部屋である左心室と、全身へ血液を送る大動脈の間にある弁です。

この大動脈弁が硬かったりくっついたりして開きにくくなると(狭窄)、血液が大動脈弁からうまく出ていけずに左心室に負担がかかります。

続いて左心室の壁の肥厚左心室内腔の縮小が起こり、心臓の働きが低下して全身にうまく血液が送れず、心不全症状が引き起こされます。

 

動脈硬化など、加齢による変性で高齢者に起きやすい大動脈弁狭窄症ですが、出生1万人あたり3.5人という非常に稀な割合で、先天性に大動脈弁狭窄症を発症します。

重症の場合、心不全チアノーゼといった、胎児および新生児の生命にかかわる症状を引き起こす疾患です。

 

 

胎児の重症大動脈弁狭窄症は、どのように診断する?

 

 

成人であれば心電図検査や心臓超音波検査を用いて心臓や弁の動き・狭さを調べていきますが、妊婦さんのお腹の中にいる胎児の心臓の弁の狭さを直接捉えることは困難であるため、超音波検査による左心室の肥大化の有無で判断します。

妊婦健診で心臓の大きさに異常が見つかった場合、重症大動脈弁狭窄症があるか精査へと進みます。

 

 

重症大動脈弁狭窄症に対する、出生後の外科的治療

 

 

大動脈弁の狭窄により左心室がうまく機能しないため、右心室のみで肺動脈と大動脈の循環を確保できるようにする必要があります。

出生後、段階的にノーウッド手術、グレン手術、フォンタン手術を施行しますが、非常に難しい手術であり、フォンタン手術を乗り越えられる患者さんは6~7割だと言われています。

 

また、全ての患者さんでこれらの手術が適用できるわけではなく、心不全や左室肥大の進行具合や、肺動脈の太さ、弁の状態などの条件をもとに検討が行われます。

重症大動脈弁狭窄症そのものを治せる手術ではなく、術後も心不全や不整脈を起こすリスクが高いため、半永久的に専門医によるフォローが必要となる点にも注意が必要です。

適用があれば、出生後に大腿動脈からカテーテルを挿入し、大動脈弁を拡げる治療が行われることもあります。

 

 

胎児へお腹の外からアプローチする、胎児大動脈弁形成術

 

 

国立成育医療研究センターの左合先生らのチームは、重症大動脈弁狭窄症の胎児に対し、日本で初めて胎児治療を実施しました。

 

「胎児大動脈弁形成術」は、妊婦さんの腹部から子宮内にいる胎児の心臓の左心室まで針とガイドワイヤーを通し、ガイドに沿ってカテーテルを入れ、狭くなった大動脈弁をバルーンで膨らませる手術です。

胎内にいる段階で大動脈弁を拡げることで、左心室肥大を防ぎ心臓の発育を阻害せず、正常な血液循環を維持することができます。

 

胎児大動脈弁形成術

 

 

参考:先天性の重症大動脈弁狭窄症に対して国内初の胎児治療を実施 ~本臨床試験が進むことで、今後の治療法の確立に期待~ | 国立成育医療研究センター (ncchd.go.jp)

 

 

 

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