日本人の2型糖尿病における特徴として、インスリンの分泌が悪いことがあるため、妊娠糖尿病に対してはややリスクを持った民族であると言えます。
我が国の疫学的特徴として、インスリンの感受性は悪くはなく、そして最近のライフスタイルの変化により肥満、耐糖能低下の人が増え、生活習慣病を介して糖尿病になる人が増えている事が知られています。
妊娠という視点から考えると、晩産化がとても大きな最近の特徴です。
1970-90年代では25-29歳が出産のピークでしたが、現在は30-34歳がピークとなり、2番目が25-29歳、そして3番目の35-39歳もかなり増えています。
妊娠後半期においては、妊娠糖尿病と診断されたら速やかにその方にあった食事療法を行う必要があります。
患者が元々、妊娠前に普通の体格か、痩せていたか、肥満だったかという事に応じて、それに対しての食事療法を意識し、場合によっては栄養指導も受けてもらう必要があります。
そのうえで、血糖自己測定を行い、朝食前の空腹時血糖と、3食ごとに食後2時間値を測り、朝の空腹時95㎎/dl以上、食後血糖値が120mg/dlまたは140mg/dl以上であれば、その頻度が増えていく場合にはインスリン療法を導入します。
注意しなければならないのが、母体の体重増加量です。
患者が多めに食事をとって血糖値が上がっていた場合、インスリン量を増やすと血糖値は見かけ上は正常にコントロールされているにも関わらず、母体の体重がどんどん増えていくような事態に陥ります。
このような過剰栄養摂取がないことを把握するためにも、血糖値、母体の体重、胎児の発育を合わせて管理していくことが大事である。
次に、妊娠の前半期の場合には、つわり期は糖負荷試験の精度が落ちるため、つわりのない時期に糖負荷試験を実施する必要があります。
妊娠糖尿病と妊娠前半期に診断された場合には、1か月に1回のヘモグロビンA1c(HbA1c)値やグリコアルブミン(GA)値の検査等を用いて経過をフォローします。
肥満で血糖測定も行い、高値ならばインスリン療法の導入を検討する事もありますが、肥満でない方や家族歴のない方に血糖値だけでインスリン療法を導入することは、あまり推奨されていません。
最近の報告では、そのように初期から厳密な管理を行うと、むしろ胎児の発育が小さくなり、発育不良となってしまうという報告が出てきているため、注意が必要となります。