マイコプラズマ肺炎と新型コロナウイルス感染症は、発熱や咳嗽などの似ている症状はありますが、相違点があります。
まず、新型コロナウイルス感染症に特有な嗅覚・味覚障害があれば、新型コロナウイルス感染症の疑いが高くなります。
ただし、嗅覚・味覚障害が生じる確率は高くありません。
マイコプラズマ肺炎と新型コロナウイルス感染症では、レントゲンなどの画像検査結果が異なるため、画像検査を行うことで鑑別できることが分かってきました。
症状に関しては、マイコプラズマ肺炎は鼻汁がなく咳嗽が主体である点が大きな特徴です。
一方、強い咽頭痛・イガイガ感・鼻汁(鼻閉)がある場合は、新型コロナウイルス感染症のオミクロン株によるものであると考えられます。
新型コロナウイルスが流行している間は、マスク着用などの感染対策が徹底されているため、マイコプラズマ肺炎は流行しないと予測されます。
しかし、新型コロナウイルスが収束し感染対策が疎かになってくると、マイコプラズマ肺炎が流行し始めると予測されるため注意が必要です。
肺炎には、市中肺炎と院内肺炎という2つの分類があります。
さらに、市中肺炎には純粋な市中肺炎と、老健施設などに入所しており誤嚥性肺炎を起こしやすい高齢者の間で生じる医療・介護関連肺炎があります。
マイコプラズマ肺炎は若年者に起こりやすい病気であり、高齢者に起こる頻度は非常に低いです。
高齢者、老健施設に入所されている方、家でほぼ寝たきりの方などに肺炎マイコプラズマは感染しないため、マイコプラズマ肺炎は医療・介護関連肺炎にほとんど関与しません。
院内肺炎は、病院に入院して48時間以降に発症する肺炎です。
病院に入院される方の多くは免疫機能が低くなっているため、病原性の弱い弱毒菌によって感染します。
市中の肺炎マイコプラズマは病原性の強い強毒菌であるため、院内肺炎にほとんど関与しません。
日本では、さまざまな感染症に対してセフェム系の抗菌薬がよく用いられます。
しかし、マイコプラズマ肺炎にはセフェム系を含むβ-ラクタム系の抗菌薬は効きません。
マイコプラズマ肺炎に効く薬は、マクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系です。
リンコマイシン系の抗菌薬も時々用いられます。
マイコプラズマ肺炎は特定の薬剤に耐性ができ、その薬剤が効かなくなってしまうことがあります。
現在、テトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗菌薬には耐性はできていませんが、マクロライド系、リンコマイシン系の抗菌薬に耐性ができています。
マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマそのものによる病原性よりも、それによって引き起こされる生体反応によるダメージが強いといわれています。
マクロライド系の抗菌薬は抗炎症作用があるため、薬剤耐性はありますがマイコプラズマ肺炎への効果が期待されています。
しかし、その効果が得られるまでに時間がかかってしまうため、発症後48〜72時間で解熱しない場合は、マクロライド系ではなくテトラサイクリン系やニューキノロン系の抗菌薬に変更することが推奨されています。