マイコプラズマ肺炎の重症化:治療方針と流行時の予防法

マイコプラズマ肺炎では数%が重症化します。重症化の指標であるIL-18というサイトカインは、検査結果に時間を要することが課題でしたが、近年LDHが新たな指標となっています。今回は、マイコプラズマ肺炎の重症化と治療方針、流行時の予防法などについて、関西医科大学 内科学第一講座 呼吸器感染症・アレルギー科の宮下 修行先生に教えていただきました。

 

マイコプラズマ肺炎の重症化と治療方針

 

 

正式な頻度は定かでありませんが、マイコプラズマ肺炎の患者さんの2〜5%程度は重症化します。

 

マイコプラズマ肺炎にかかった時に最初に関与するのがIL-18というサイトカインであり、IL-18の濃度が高いと重症化するという研究データがあります。

IL-18の数値を重症化の指針の1つとして対応すべきですが、検査結果が分かるまでに数日〜1週間程かかってしまい、その間に患者さんの容体は悪化してしまいます。

 

IL-18に相関するものとして、LDH(乳酸脱水素酵素)1時間以内に検査結果が分かり重症化を示す指標であることが最近分かりました。

LDH値が 302〜363 U/L に上昇すると、重症化の治療を行った方が良いと判断します。

来院時にすでにLDH値が 363 U/L を超えている場合は、すぐに重症化治療を行います。

 

マイコプラズマ肺炎は、病原因子そのものよりも生体の過剰免疫反応によって身体にダメージを与えます。

過剰免疫反応を抑えるには、例えば新型コロナウイルス感染症ではステロイドが有効だと分かっているように、マイコプラズマ肺炎でもステロイドが極めて有効です。

LDH値が 363 U/L を超えている場合は、直ちにステロイドを使用しなければなりませんし、その値より低い場合はステロイド治療を準備しておく必要があります。

 

 

治療薬と副作用

 

 

私は治療薬としてテトラサイクリン系の抗菌薬を推奨しています。

テトラサイクリン系の抗菌薬は、日本では用いられていないため薬剤耐性が全くできていません。

セフェム系、ニューキノロン系、マクロライド系の抗菌薬は薬剤耐性が起こる可能性があり使用を減らしていきたいので、その代替としてテトラサイクリン系の抗菌薬は非常によく効きます。

 

ただし、テトラサイクリン系の抗菌薬には副作用があり、若い女性が服用すると浮遊感を覚えたり、注射の場合は血管痛が生じることがあります。

副作用を考慮すると、ニューキノロン系やマクロライド系の抗菌薬は安全です。

 

 

マイコプラズマ肺炎流行時の予防法

 

 

今回の新型コロナウイルス感染症の流行により、マイコプラズマ肺炎の流行はほとんどなく、マスク着用の有効性が高いことが確認されました。

肺炎マイコプラズマは飛沫感染のため、マスクを着用すれば感染を防ぐことができます。

そのため、今後マイコプラズマ肺炎が流行し始めた際にはマスクを着用することが感染予防のために重要です。

 

 

マイコプラズマ肺炎について知っていただきたいこと

 

 

マイコプラズマ肺炎の感染は、小集団内で発生散発例が少ないことが特徴で、学校・家庭内で起こりやすくなっています。

10〜30代の方は感受性が高いため発症しやすく高齢者は感受性が低いため発症しにくいと言われています。

 

マイコプラズマ肺炎が流行するのは秋から冬の時期であるため、この時期に集団内で咳嗽が流行している場合は、インフルエンザとともにマイコプラズマ肺炎にも注意する必要があります。

春から夏にかけては、同様に強い咳嗽を生じる百日咳が流行することも知っていただければと思います。

 

感染性咳嗽の位置づけ

 

 

 

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