妊娠時に高血圧を認めた場合、妊娠高血圧症候群(以下、HDPと略します)として取り扱います。
HDPは、以下の四つに分類されます。
①妊娠高血圧腎症 妊娠20週以降に高血圧と蛋白尿を認める場合、妊娠高血圧腎症と分類されます。 2018年からは蛋白尿を認めなくても肝機能障害、腎機能障害、神経障害、血液凝固障害や赤ちゃんの発育が不良になれば、妊娠高血圧腎症に分類されるようになりました。②妊娠高血圧症 妊娠して20週以降に初めて高血圧を発症し、産後12週以内に元に戻る、かつ、①の定義に当てはまらない場合。③加重型妊娠高血圧腎症 妊娠する前から高血圧・蛋白尿を認めるが、妊娠したことでその症状が悪化した場合。④高血圧合併妊娠 妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合。
この中でも、収縮期血圧が160mmHg以上、拡張期血圧が110mmHg以上だと脳卒中のリスクが高くなるので、重症とみなします。
また、母体の臓器不全や胎盤機能不全があるかどうかでも重症かどうかを判断します。
発症時期によっても型を分けており、34週未満に発症する場合を早発型、34週以降に発症する場合を遅発型という形で分けています。
HDPは、それほど珍しい病気ではない、と齋藤先生はお話されています。
年間81万人ほどの出産のうち5%の頻度、人数にすると約4万人の妊婦さんが発症する、それほどまれな病気ではない、とのことでした。
HDPは多くの場合、血圧測定と尿検査を行う、定期的な妊婦健診で発見されます。
自宅で測れる場合、血圧が135/85mmHg以上であれば、産婦人科を受診することをお勧めします。
また、妊娠性高血圧腎症を発症している場合には、身体が強くむくむ、特に、寝不足の時のように腫れぼったいまぶたになることが多いです。
基本的には、むくみが出ると、急激に体重が増加するので、そうした場合にも早めに産婦人科を受診していただきたいと思います。
HDPのうち、妊娠性高血圧腎症(PE)は重篤な疾患となっています。
世界的にみると、年間7万6千人の女性と約50万人の胎児が、この疾患で亡くなっています。
この病気になった母親やその子どもは将来、高血圧・腎臓病・脳卒中のリスクが高くなることが研究で知られています。
毎日血圧を測る、適切な栄養管理・運動管理を行うことが、妊娠後も必要になってくると思われます。