妊娠高血圧症候群(HDP)の診断・治療について

妊娠をきっかけとして起こる病気は、実は様々あり、病気が悪化することもあれば、新たに問題がおこることもあります。 ここでは、様々な合併症が赤ちゃんやお母さんの身体に重篤な影響をもたらしかねない、妊娠性高血圧症候群の診断とその治療について、国立大学法人 富山大学長 齋藤 滋先生に教えていただきました。
出演医師 妊娠高血圧症候群(HDP)

齋藤 滋 先生

国立大学法人 富山大学

 

妊娠性高血圧症候群(HDP)の発見のための検査・診断について

 

 

妊婦外来で血圧を測定し、140/90mmHg以上であった場合、安静にしてから再度測ります。

それでも同様の数値だった場合には、妊娠性高血圧症候群(以下HDPと略します)と診断します。

 

さらに、尿検査を行って、尿蛋白300mmg/日以上、もしくは尿蛋白/クレアチン比が0.3㎎/mg CRE以上の場合、尿蛋白尿陽性となります。

 

この二つがそろえば、妊娠性高血圧腎症と診断されます。

 

また、尿蛋白がでなくても、肝臓検査・腎臓の検査で異常がでたり、神経障害血液凝固障害胎盤機能不全がある場合にも、妊娠性高血圧腎症という診断になります。

 

 

妊娠性高血圧症候群(HDP)の治療方針

 

 

妊娠高血圧腎症加重型妊娠高血圧腎症重症妊娠高血圧症重症高血圧合併妊娠の4つの場合は、入院管理になります。

入院後は、血圧の管理血液検査をして肝臓とか腎臓などに問題が出ていないか、尿検査をしてどのくらいの蛋白がでているかをみます。

 

また、超音波検査などを使って、赤ちゃんに異常がないかを頻回にチェックします。

もし、激しい腹痛や頭痛といったHELLP症候群といわれるようなきわめて重篤な症状が出た場合には、すぐに医療スタッフに伝えるように指導します。

 

管理をしていても、もし180/120mmHgと血圧がすごく高くなってしまった場合高血圧緊急症と呼びます)、脳卒中のリスクが非常に高くなるため降圧剤を使います。

それでも血圧が下がらなかったり、臓器障害が出たり、胎盤機能不全など、お母さんと赤ちゃんに命の危険がある場合には、緊急帝王切開を行って出産というかたちをとります。

 

最初にあげた、入院管理になる4つの場合には、37週以降は正期産になり、赤ちゃんが十分に育っているので、できるだけ早く出産できるようにします。

 

それ以外の状態で、血圧が高いが重症でなければ、妊娠40週まで待つことにしています。

 

 

血圧を下げる薬をすぐに使えない理由

 

 

血圧が高いなら、降圧剤で血圧を下げればいいのでは、と考える方は多いと思います。

しかし、妊婦さんの場合、降圧剤は慎重に使わなければならないと齋藤先生は話されます。

なぜなら、血圧を高くすることで赤ちゃんに血液を送っているので、無理に下げると赤ちゃんに血液がいかなくなり、命の危険が出てくるからです。

 

なので、降圧剤を使うときは、慎重にモニタリングをしながら使っていきます。

ただし、血圧が180/120mmHgまで上がった時は高血圧緊急症となるため、お母さんの命を守るために急激に血圧を下げる方法を使わざるを得ない、ということになります。

 

 

 

「妊娠高血圧症候群(HDP)の診断・治療について」に関する記事・動画

妊娠性高血圧症候群とはどのような病気でしょうか
妊娠高血圧性腎症の早発型と遅発型の違い

関連病名から探す

本サイトの利用にあたっては、当社の定める利用規約が適用されます。利用規約はこちらからご確認ください。