日本産婦人科医会によると、挙児を希望するカップルの10〜15%、およそ5.5組に1組が不妊に悩んでいると考えられており、加えて、3組に1組の夫婦は不妊の心配をした経験があるとも言われています。
女性の不妊症の原因にはいくつかの因子があり、以下のようなものがあげられます。
1.排卵因子
卵巣機能を抑制するプロラクチンが過剰産生され高プロラクチン血症になると、排卵がうまく起こらなくなります。ホルモン値の乱れと月経不順があり、卵巣の中に小さい卵胞はたくさんあるがうまく発育しない多嚢胞性卵巣症候群や、卵巣の機能自体が低下する早発性卵巣機能不全でも排卵がうまく起こらず不妊の原因となります。また、ホルモンは生活の様々な要因に影響を受けやすく、ストレスや過剰なダイエットでも排卵がうまくいかなくなることがあります。
2.子宮因子
子宮に筋肉組織の良性の瘤ができる子宮筋腫は、子宮の外側に突出しているタイプではほとんど影響しませんが、内腔に突出していると不妊の原因になることがあります。筋腫とは異なり柔らかく充血しやすいポリープ状の病変を子宮ポリープと呼び、多くは良性のものですが、発生する場所や大きさによっては着床の障害となります。
3.免疫因子
1~3%と非常に少ない頻度ですが、身体の中に入ってきた精子を攻撃して動かなくしてしまう抗精子抗体を持っていると、妊娠しづらくなります。
4.卵管因子
卵管は卵巣から出てきた卵子を子宮へと送る管で、卵子と精子が出会い、受精卵が分割を繰り返して成長していく場です。卵管は左右にありますが、これがどちらとも閉塞や狭窄を起こしていると、自然妊娠が難しい原因となります。
5.頸管因子
排卵期には、サラサラで粘度の低い頸管粘液がおりものとして出てきます。この頸管粘液によって、膣まで来た精子が卵管まで移動しやすい状態になりますが、量が少なかったり、精子との相性が悪いと、不妊の原因になることがあります。
不妊症の検査は月経周期に合わせて行われることが多く、月経が始まってから3~5日目の低温相ではホルモン検査が実施されます。
下垂体から出てきて卵巣を刺激し卵子を育てるホルモン LH・FSHがバランスよく出ているかや、この時期の女性ホルモン・男性ホルモンの量やバランスを調べ、排卵障害の原因を突き止めていくことが可能です。
月経が終わってすぐのタイミングで子宮卵管造影を行い、子宮の形態・卵管の疎通性を調べたり、超音波検査で卵胞の大きさを見て排卵時期を予測することもあります。
排卵期には夫婦生活をもっていただき、頸管粘液中の運動精子を見るという性交後試験(フーナー検査)で、精子と頸管粘液の適合性を診断していく場合もあります。
さらにこの時期に卵胞が大きくなっているか、その後着床するために子宮内膜が厚くなっているかのチェックを、超音波検査で行います。