人工授精とは、持参された精液を精子洗浄濃縮法にて0.5㏄程に濃縮し、柔らかいチューブを用いて子宮の奥まで注入する方法です。あらかじめ排卵時期を予測して行います。
この方法では、運動性の高い濃縮された精子を直接子宮の奥まで届けることができ、卵子までの移動距離が少なく、たどりつく精子の数が多くなるため、精子の数に異常がある場合などの良い適応となります。
体外受精・胚移植・顕微授精・凍結肺・融解移植などの技術を、全部含めて生殖補助医療と呼びます。
体外受精ではまず、卵巣刺激(排卵誘発剤の注射)等を用いて複数の卵胞を育て、経膣超音波下にモニターを見ながら針を刺して採卵を行い、体外に取り出した卵胞に精子をふりかけ培養します。
さらに精子の数が非常に少ない場合は、顕微鏡で拡大しながらガラス管を用いて卵胞に直接精子を注入する、顕微授精を行う場合もあります。
このようにして受精させた卵を3日から5日ほど培養し、分割が進んで妊娠の可能性があるものを胚移植(子宮に戻すこと)または凍結して保存しておくのが、体外受精の一連の流れとなります。
2022年4月以降、不妊症の原因検索のための検査と治療に加え、タイミング療法・人工授精といった一般不妊治療、前項で解説した生殖補助医療にも、保険が適用されるようになりました。
外来での排卵誘発も保険適用です。
保険診療となる範囲には年齢と回数の制限があり、40歳未満の方は胚移植6回まで、40歳以上43歳未満の方は胚移植3回までが保険適用となります。
体外受精に関しては、採卵数に応じて費用が変わる場合もあるため、自己負担額を担当医や医療機関に確認して進めていくことが大切です。
村瀬先生は、不妊治療を検討されている方へ以下のように語りかけられています。
不妊治療は、「ゴールが見えない治療」と言われることが多くあります。
いつ妊娠するか分からず、治療を始めてみると「こんなはずじゃなかった」と思われる方も多いのが現実です。
妊娠前からある程度目標を決めておくことも重要ですが、治療途中にもご夫婦でよく話をしていただき、本来の目標を振り返る時間も必要です。
自治体によっては、不妊症・不妊治療に関する相談を受けている所もあるため、利用されると良いでしょう。
女性の場合、妊娠しやすい期間はどうしても限られてきてしまいます。
必要以上に急ぐことはありませんが、35歳すぎから少し妊娠しにくくなることや、流産が起こりやすくなってしまうことは考慮したうえで、治療に臨まれることも大切です。