アトピー性皮膚炎について

近年、患者さんが増えてきているといわれるアトピー性皮膚炎は、気管支喘息、アレルギー性鼻炎と並ぶ、三大アレルギー疾患の一つです。 今回は、アトピー性皮膚炎についての概要を、罹患率やリスクなどを含め、国立成育医療研究センター アレルギーセンター 総合アレルギー科の福家 辰樹先生に教えていただきました。

 

アトピー性皮膚炎の概要

 

 

アトピー性皮膚炎とは、増悪・寛解を繰り返す、かゆみのある湿疹を主とする疾患のことです。

患者さまの多くは、アトピー素因と言われる、いわゆる、アレルギーになりやすい体質を持っています。

この病気はいわゆる慢性疾患であり、慢性となる仕組みにアレルギーが関与しているということです。

 

アトピー性皮膚炎の定義(日本皮膚科学会の診断基準)

 

アトピー性皮膚炎の状態が悪いと、特に子どもにとっては、食物アレルギー喘息鼻炎といった他のアレルギー疾患を発症しやすくなります。

非常に重症になると、乳児では命にかかわる危険性を伴うほどの影響があったり、成長や発達、集中力に影響を及ぼしたりします。

目の合併症として、白内障網膜剥離などが起こることがあります。

学童期では、いじめ不登校の原因になることもあります。

 

これらは、アトピー性皮膚炎が長期化・重症化するほどリスクが高くなることがわかっていますので、早期に、適切に管理することが重要になってきます。

 

 

近年の罹患率

 

 

小児アレルギー疾患の有病率

 

医師から診断されたアトピー性皮膚炎の有症率は、1歳で4%、2歳で7.3%、3歳で6%となっています。

一方、保護者からの報告で「かゆみのある湿疹がある」と答えた割合は、16.8%から13.4%となっています。

この数値は、十分な受診行動に至っていなかったり、適切に診断されていない可能性が示唆されています。

 

小児アレルギー疾患の増減率推移

 

示されているグラフは、アトピー性皮膚炎に3歳までにかかったことのある割合を示しています。

 

年代別アトピー性皮膚炎の期間有病率

 

全年齢でのアトピー性皮膚炎の有症率は、小児期では10人または6~7人に1人位の割合に、診療ガイドラインに記載されているアトピー性皮膚炎の重症度別割合は、乳幼児期では軽症が84~85%位、小児期では72~73%位なので、学童期においては6~7人に1人の割合で中等症のレベルになっているといえるでしょう。

 

アトピー性皮膚炎の重症度別割合

 

 

他疾患との関連性

 

 

アレルギーマーチとは、アトピー素因のある方にアレルギー疾患が次々に発症していく様子をマーチに例えたものです。

例えば、乳幼児期に食物アレルギー、アトピー性皮膚炎を発症、1、2歳児になるとダニ、杉のアレルギーが出てきて喘息・鼻炎になるといったようなものです。

これらの根底にアトピー性皮膚炎が居座っているため、そこをしっかり予防や治療していく必要があると言われています。

 

一見同時に現れるようなアトピー性皮膚炎と食物アレルギーは、出生コホート研究により、乳幼児期のアトピー性皮膚炎が食物アレルギー・感作のリスクとなっていることが、わかっています。

 

 

発見の経緯について

 

 

小児医療においては、乳幼児健診や予防接種、風邪等で受診されたタイミングが、アトピー性皮膚炎を早期に発見して介入していくチャンスです。

また、保護者の方があまり気にされていない場合、医療関係者以外の保育所・幼稚園などの先生が気づく場合もあります。

 

受診の機会にアトピー性皮膚炎を疑われる場合は小児科医にご相談いただきたいと思っています。

 

 

 

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