アトピー性皮膚炎のステロイド外用療法について

前回は、特に、アトピー性皮膚炎の診断・治療についてお話を伺いました。 今回は、アトピー性皮膚炎の治療薬の中でも、主要な薬剤となるステロイド外用薬を使った治療法について、国立成育医療研究センター アレルギーセンター 総合アレルギー科の福家 辰樹先生に教えていただきました。

 

ステロイド外用療法について

 

 

まず、ステロイドは生きていく上で非常に重要かつ必要なホルモンであり、体内で毎日作られているものです。

例えば男性・女性ホルモンなども知られ、血圧や血糖値の調整を調節を担っています。

 

ステロイドの副作用につきましては、内服薬は長期間服用すると成長抑制、免疫抑制、多毛などの問題が副作用として挙げられますが、通常の使用法において塗り薬ではこれらの副作用は問題にならないとされてます。

ただ漫然と長期間連用すると、内服薬と同様の副作用があるといわれますが、正しく使えば元に戻ることもわかっているので、副作用を回避して正しく使うことが重要となります。

 

副作用を恐れすぎて治療が進まず、湿疹が悪化するとさらに恐ろしい合併症が現れるので注意が必要です。

目の周りのひどい湿疹で白内障網膜剥離が起こったり、低身長になったり、食物アレルギーを恐れて、栄養不良になることもあります。

大人になると、皮膚癌も気づかれにくいので早めの治療が必要となります。

 

 

 近年の治療トピックス

 

 

ステロイド外用薬によるプロアクティブ療法というものを紹介したいと思います。

 

まず寛解導入と言って、ステロイドの塗り薬を毎日塗って炎症がなくなると、かゆみがなくなり、見た目もツルツルになります。

この状態が寛解です。

ただ、まだ炎症は残存しているので、ステロイドの副作用が起こりにくい予防的な方法で良い状態をキープしていく、つまり、寛解維持が重要になってきます。

 

良い状態がキープできると自分でバリアを作ることができるので、ステロイドの量も減って保湿中心の治療へと移行できます。

アトピー性皮膚炎の塗り薬は、ステロイド以外ではプロトピック軟膏コレ口ム軟膏モイジルト軟膏の3種類が存在しますが、これらをうまく組み合わせて用いることも1つの治療法です。

このような塗り薬を長期に使用して、肌のバリアがしっかり整えば、保湿に移行しやすくなることも知られています。

 

プロアクティブ療法

 

 

 ご視聴いただいた皆様へのメッセージ 

 

 

アトピー性皮膚炎は適切な薬をしっかり使用すれば皮疹・かゆみも改善していき、日常生活に支障のない状態も実現できます。

そして良い状態を長くキープすることによって薬を減らしていき、最終的に症状がなく、薬もほぼ必要としないようなゴールを目指すこともできます。

 

患者さんにとって、今後ずっと治療を続けるのではないかという不安は、精神的な負担となっている場合もあります。

明確な治療法が存在することを知り、治療を継続していってほしいと思います。

 

しっかり治療を行っているが、1、2ヶ月も改善が見られなかったり、赤み・びらん・かゆみなどが非常に強かったり、細菌ヘルペスなどウィルス感染による合併症、乳児期の体重減少・活気不良など全身的な状況が悪い場合には、すぐにアトピー性皮膚炎の専門医を受診していただければと思います。

 

 

 

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福家 辰樹 先生
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