糖尿病では、重症化することで合併症が進行し、患者さん自身のQOLが低下してしまうことや、寿命が短くなることが問題となります。
これらをいかに防ぐかが重要です。
まず大きな問題としては、腎症が挙げられます。
現在国内では年間1万6千人が、糖尿病による合併症で腎臓を悪くして、透析が必要な状態となっています。
これをいかに防ぐかは、患者さん自身にとってのみならず、保険診療、すなわち膨れ上がる社会保険費を抑制しようという点でも重要です。
現在、国を挙げて、腎症の重症化予防の取り組みが行われています。
この取り組みは腎臓を守るだけなく、同時に心筋梗塞の予防にも繋がっています。
また、認知症など、高齢によって起こりうる様々な疾患の予防効果もあると考えられています。
徳島県は国内の透析導入率が最も多い県であり、国策として進んでいる重症化予防対策を、国に先行して2年前から始めています。
糖尿病の治療においては、腎臓の症状が悪化した時に、糖尿病専門医よりも内科等のかかりつけ医による治療が重要となります。
そのため、糖尿病性腎症の早期マーカーである「尿アルブミン」値を測定しておきます。
腎症が生じていることを早期から認識し、その段階から内科のかかりつけ医による介入が行われます。
その後、症状の悪化や腎機能の悪化が見られた場合には、糖尿病専門医が介入し、さらに進行して腎不全の状態になると、腎臓の専門医が担当することになります。
地域のかかりつけ医と連携を取りながら、医療の質を高く維持していきます。
このような連携体制を維持するためには、専門医・コメディカル同士である程度のルールを決めて、互いがどの様に介入していくかを認知しておく必要があります。
そのような点を盛り込んだ治療方針が現在も継続されて採用されています。
ここで重要なのは、コメディカルの介入です。
糖尿病の治療では、CDEJ(Certified Diabetes Educator of Japan)と呼ばれる、療養指導士が活躍しています。
しかし、療養指導士の資格保持者がいるのは、専門医が在籍する施設に限られます。
したがって、地域のかかりつけ医を主体として糖尿病治療を行うためには、多くのコメディカルスタッフが、糖尿病について知ってもらう必要があります。
そのため、徳島ローカルで「地域糖尿病療養指導士」という認定制度を設置し、地域のクリニックの医師やそこで働く医療スタッフが積極的に糖尿病について学べるようにしています。
最近では、高齢者の介護をするケアマネジャーや介護士、医療福祉士など様々な職種の人にも学んでもらえるように、サポーター制度の設置も検討されています。
患者さん自身のレベルや年齢、医療機関に応じたタイプのコメディカル育成によって、医療全体の底上げを図り、糖尿病の重症化を防ぐ対策を実施しています。