前立腺肥大症のレーザー内視鏡手術、その方法・適応は?

前立腺肥大症は男性特有の疾患であり、また「積極的に治療する必要のない」良性疾患であることが多いため、手術の適応となることは少ないと言われています。また、医薬品開発の進歩により、自覚症状の多くは内服薬の服用のみで改善することが多くなっています。そのような中でも、手術適応となる症例はいくつかあります。 今回は、前立腺肥大症の手術治療の中でも特に「内視鏡手術」について、その具体的な方法や治療実績などについて、 淵野辺総合病院・泌尿器科の設楽 敏也先生に教えていただきました。

 

前立腺肥大症の内視鏡手術

 

 

前立腺肥大症の治療として行う内視鏡のレーザー手術は、「蒸散術(CVP)」と呼ばれ、熱で飛ばして肥大組織を無くす治療です。

その中でもよく行われている手術方法は、「核出術(HoLEP)」と呼ばれ、内視鏡を使ってレーザーにより肥大組織をくり抜くように摘出する手術です。

この手術のメリットは、出血も少なく、適応組織の大きさに制限が無いことで、開腹して行わなければない手術であっても、内視鏡で行うことができます。

 

核出術(HoLEP)

 

内視鏡で電気メスを使ってスライス状に切り取っていく手術が「TURP」という切除術です。

この方法では、小さな切片ごとに切り取っていくため、外側に到達するまでに時間がかかることと出血量が問題となります。

 

経尿道的前立腺切除術(TURP)

 

これに対してHoLEPでは、肥大した組織を一つの塊として、被膜という固い膜に沿って取っていく手術です。

そのため、あまり出血もなく、手術時間も短時間で済むのがメリットと言えます。

HoLEPでは肥大組織を塊として切除します。

 

HoLEPとTURPの比較

 

取り終わったあとの組織を尿道から取り出すことはできないため、膀胱に落として、回収する機械(モーセレーター)で細かく砕きながら取り出します。

 

肥大した前立線組織をモーセレーターを用いて排出

 

 

内視鏡手術の現状

 

 

前立腺肥大症の手術全体で、レーザー手術が占める割合は20~30%、その中でも最も多いのがレーザーによる核出術(HoLEP)です。

症状が酷くなく、特別な合併症の無い人の場合は、従来の電気メスによる手術で治療が可能です。

ほとんどの人はこのような治療を受けられていると思います。

 

最近は抗凝固薬を服用している人が非常に多くなりました。

そのため、電気メスによる手術のように出血が見込まれる術式を行う場合、抗凝固薬の服用を一旦止める必要があります。

しかし、服用を止めてしまうデメリットを鑑みた場合、服用を継続したまま手術をすることのできる、出血の少ない術式として、レーザー手術を選ぶ人が増えてきているということです。

 

蒸散術でも核出術でも、出血しやすい人にも適応できるというメリットがあります。

 

 

前立腺肥大症の治療の実績(淵野辺総合病院・泌尿器科の場合)

 

 

淵野辺総合病院では、年間およそ180件程度の手術を行なっています。

 

前立腺肥大症は基本的に良性疾患であり、その手術は症状を改善する目的で行うため、治らない・上手くいかないといったリスクは低いと言えます。

前立腺肥大症の手術治療の合併症として一般的なのは、後出血といって、出血が多くなることや、術後の尿失禁も問題となりやすいです。

後出血は輸血するほどの出血量ではなく、尿失禁は前立腺レーザー核出術の場合は術後1ヶ月時点で10%の人に起こると言われています。

これも徐々に改善しています。

通常、淵野辺総合病院では管を抜いてから数日、あるいは1~2日目には失禁しなくなると言います。

 

特別な余病がない場合には、失禁はあまり問題にならないと考えて良いでしょう。

 

 

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