排尿後にも尿が残ったような感じがする(残尿感)、すぐにトイレに行きたくなる(頻尿)、排尿中に尿が何度も途切れる(尿線途絶)、尿をがまんできない(尿意切迫感)、尿の勢いが弱い(尿勢低下)、寝ている間に何度もトイレに行く(夜間頻尿)――。
こうした排尿トラブル、排尿障害があると、男性の場合、「前立腺がんかも……」と思うかもしれません。
たしかに前立腺がんが進むと排尿障害が生じることは多いのですが、男性の排尿障害の多くは「前立腺肥大症」が原因です。
前立腺は、男性のみにある臓器で、膀胱の真下にあり、膀胱から出た尿道のまわりを取り囲んでいます。
通常は3~4㎝程度の大きさで、大きさも形も栗の実に似ています。
前立腺には「内腺」と「外腺」があり、前立腺の内側が「内腺(中心領域、移行領域)」、外側が「外腺(辺縁領域)」です。
内腺が肥大すると、その真ん中をとおっている尿道や膀胱が圧迫され、尿のとおりが悪くなって、さまざまな排尿障害が起こります。
これが、前立腺肥大症です。
つまり、前立腺肥大症とは、前立腺の内腺が大きくなっている状態のこと。
一方、前立腺がんの多くは、外腺のほうにできます。
外腺にできたがんが真ん中の尿道にまで影響を及ぼすということは、がんが大きくなっているということ。
ですから、排尿障害を起こしやすいのは前立腺肥大症のほうで、一般的には、前立腺がんで排尿障害が起きればがんがかなり大きくなっていることを意味しています。
ただし、なかには内腺に前立腺がんができることもあるので、一概には言えません。
前立腺がんが進行すると、排尿障害以外にも、腰痛や骨の痛み、骨折といった症状がみられることがあります。
前立腺がんは、骨に転移しやすいがんなのです。
骨転移がかなり進むと、脊椎にもがんができ、脊髄損傷によって下半身に麻痺が出ることも、まれにあります。
つまり、排尿に関することにしても、骨に関することにしても、自覚症状が出ている時点である程度、前立腺がんが進行していると考えられます。
では、自覚症状がない段階で前立腺がんを見つけようと思ったら、どうすればいいのでしょうか。
早期発見のきっかけとして多いのは、「PSA」値の変化です。
PSAとは「Prostate Specific Antigen(前立腺特異抗原)」の略で、前立腺がんの腫瘍マーカーとして使われています。
ただ、PSA検査は前立腺から分泌されるタンパク質の量を測定しているにすぎないので、前立腺肥大症で前立腺が大きくなればPSAをつくる細胞も大きくなり、PSA値も上がってきます。
そのため、PSA検査で基準値(4ng/m)を超えていても、必ずしも前立腺がんとは限りません。
健康診断や人間ドック、かかりつけ医の検査でPSA値が高くなっていたら、必ず専門の病院で検査を受けてください。
直腸診やMRI検査などを行って、前立腺がんの疑いが高ければ、さらに針生検で組織を採り、がん細胞が混ざっていないかと確認して、確定診断をつけます。