「切らない」舌がんの治療法!密封小線源治療とは?

放射線治療
舌がんは、口の中にできるがんの1つで、口腔底がんや歯肉がんなどと合わせて口腔がんに分類されます。舌がんの治療方法には、主に外科的治療と放射線治療がありますが、放射線治療の中に密封小線源治療という方法があります。密封小線源治療の具体的な治療方法や、そのメリットとデメリット、気になる費用などについて、東京医科歯科大学・放射線治療科の吉村 亮一先生に教えていただきました。

 

密封小線源治療とは?合併症や高齢者でも代替の方法で可能に!

 

 

密封小線源治療とは、がんの病巣部に放射線を発する小さな線源と呼ばれるものを埋め込むことで、がん細胞を死滅させる、という治療方法です。

 

 

イリジウム針と金粒子

 

 

放射線を発する線源には様々な種類がありますが、舌がんに対してはイリジウムを使うことが多いようです。

線源は針金状で、細い線状であるため、病巣部に埋め込む際に安定感があります。このため、初めにさした所で上手く安定して刺さらないことがあっても差し直しが可能となります。

 

 

イリジウムピンを使用した小線源治療の経過イメージ

 

 

また、このような形状的特徴から、病変部を放射線できっちりと取り囲むことができるため、治療効果が高いと考えられています。

ただし、イリジウムはある程度大きさのある線源であるため、身体的負担を考慮すると、合併症がある患者や高齢者に対してはあまり推奨されません。

この場合、イリジウムの代替として、金粒子が用いられることがあります。

 

 

金粒子を使用した小線源治療経過のイメージ

 

 

処置は15分程度局所麻酔で処置し治療後の痛みもほとんど無いと言われています。

痛みが少なく、口からの食事ができるため、QOLの維持にはとてもメリットが大きいと言えるでしょう。

 

 

舌がんのTNM分類(ステージ分類)

 

 

密封小線源治療が適応されるのは、原則として大きさが小さいがんです。

理想的にはT1~T2の、比較的早期のがんが良いとされています。

T1やT2の場合でも、首のリンパ節に転移する可能性が1/3ほどあり、さらにこれを放置すると、肺に転移を起こすことがあります。

 

 

Ⅰ期Ⅱ期舌がんの原病生存率

 

 

トータルで考えると8割くらいの方は生存するが2割くらいの方は亡くなってしまいます。

Ⅱ期になると生存率は7割ほどに減ってきます。

 

このため、切除治療を選ぶのか、密封小線源治療を選ぶのかは慎重に決めていかなければならないポイントです。

 

 

密封小線源治療のメリットとデメリット:最大のメリットは「切らずに治せる」こと

 

 

密封小線源治療の最大のメリットは、「切らずに治す」という点です。

食事などの生活の質を落とさずに治療ができるため、患者の心と体の両方への負担が軽減されると考えられます。

 

 

密封小線源後の口腔内の経過イメージ

 

 

デメリットとしては、入院の必要があることと、副作用として口内炎が頻発することなどが挙げられます。埋め込み治療をしてからある程度の状態に戻るまでは2~3ヶ月程度かかります。

そのため、食事内容に気をつけたり、痛み止めやうがい薬を併用する必要があります。

 

切除手術をあまり希望しない患者に対しては、まずは放射線を外部から照射する方法が第1選択肢となります。外から全体的に放射線を当てることで、がんの大きさをある程度小さくしてから小線源治療に切り替えていきます。

また、副作用が出ない程度に抗がん剤を投与して、がんの大きさを小さくすることもあります。

このような治療を進めていっても全く小さくならない場合は、切除手術が推奨されます。

 

 

気になる費用:密封小線源治療は保険適用の治療法!使う線源の量によって費用は変化

 

 

密封小線源治療は、保険適用の治療です。費用は線源をどれだけ使うかによって変動しますが、およそ70~80万円の保険負担分となるようです。

 

 

密封小線源治療を行える医療機関はどこ?全国で7施設ほどしかない!

 

 

密封小線源療法治療可能施設

 

 

密封小線源治療は、以前は、多くの医療機関で密封小線源治療を行なっていましたが、現在では全国で7、8施設ほどでしか行っていません。

関東であれば、東京医科歯科大学医学部付属病院、国立がん研究センター中央病院で行なっています。

密封小線源治療を検討する場合は、まずどの施設でその治療が行えるのかを調べてから相談に行くと良いでしょう。

 

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