頭頸部がん治療の選択肢:治療法を選択する上でのポイントは?

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頭頸部がんは耳を含めた顔全体と口の中、喉頭・咽頭などに出来るがんの総称です。頭頸部がんのリスク因子にはいくつかありますが、発症率は他のがんと比べても低く稀ながんです。しかし、その病態のバリエーションから、治療法も様々なものがあります。 今回は、頭頸部がんの中でも下咽頭がんにおける治療の選択肢について、近年開発されたロボット支援手術の実態なども含めて、東京医科歯科大学病院 頭頸部外科・教授の朝蔭 孝宏先生に教えていただきました。

 

下咽頭がんの治療の選択肢:嚥下と発声をいかに保持できるか?内視鏡的治療やロボット手術も

 

 

下咽頭がんの治療において重要なのは、嚥下(飲み込み)が上手く行えるように治療することと、発声機能を残して治療することの2点です。

 

治療選択肢として、近年日本で非常に普及しているのが経口的な治療です。

口から下咽頭まで覗いて、腫瘍だけを切除する方法です。

具体的には、ELPS(内視鏡的咽喉頭手術)TOVS(経口的咽喉頭部分切除術)が普及しています。

 

ELPSは、胃カメラによって術野における視野を確保して、口から機器を挿入して腫瘍を切除する方法です。

 

内視鏡的咽喉頭手術(ELPS)

 

TOVSは、胃カメラではなく直達型のカメラを挿入することで下咽頭の腫瘍を切除する方法です。

 

どちらも治療成績は非常に良い、という報告が多数見られています。

 

近年、欧米や韓国などでは、医療用ロボットを用いた「TORS(経口的ロボット支援手術)」が普及しています。

残念ながら日本では、医療用ロボット自体の医療機器認可はされていますが、頭頸部領域におけるロボット支援手術が保健適用されていません。

そのため、頭頸部がんの治療においてロボット手術を選択することは、現時点では難しい現状があります。

 

表在がん(小さいがん)に対しては、外科的治療以外にも、放射線療法も有効です。

一方、進行がんに至ると、治療をしても発声機能を必ずしも残すことができるわけではありません。

例えば、甲状軟骨(喉仏)にがんが浸潤しているようなケースでは、甲状軟骨ごとがんを大きく切除・摘出する必要があります。

咽喉食摘術が適用される場合もあります。

このような場合には、空腸(消化管の一部)を切除して喉頭部へ移植し、咽頭を再建します。

これによって食事は出来るようになりますが、発声機能は失われてしまいます。

 

がんの分類方法の1つであるTNM分類で、T因子「原発巣の大きさと進展度」を表します。

T0,Tis,T1~3の段階的な評価で表され、全てのがんで用いられる指標です。

 

このT因子の分類でT3に属する下咽頭がんの治療では、化学放射線療法を用います。

放射線療法だけでは根治は難しいため、抗がん剤を併用して治療する方法がスタンダードとなっています。

通常は、放射線を7週間かけて照射し、1・4・7週目にシスプラチンという抗がん剤が投与されます。

 

 

ELPS(内視鏡的咽喉頭手術)のメリット:低侵襲で元の状態へ戻しやすい

 

 

ELPS(内視鏡的咽喉頭手術)の適用となる患者さんは、下咽頭がんの中でも早期がんのケースです。

 

深部に浸潤していない表在型や、隆起型のがんが良い適用になります。

これらの患者さんはELPSで経口的に腫瘍を切除することができれば、病気になる前とほとんど同じ状態を取り戻すことができます。

術後の嚥下障害や発声の問題が起こりにくく、低侵襲治療として非常に有用とされています。

 

放射線治療の場合は、後遺症として味覚障害や、晩期障害として嚥下障害が出現することがあります。

 

ELPSで内視鏡的に治療ができれば、低侵襲で済むと考えられています。

 

術後急性期合併症

 

 

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