頭頸部がんの治療で声を失ったら…予防法や病院選びのポイントも

HPV(ヒトパピローマウイルス)感染
お酒を飲むと顔が赤くなる人のリスク
発声機能
頭頸部がんは顔や口腔内、のどにできるがんですが、その外科的切除によって声を失ったり、嚥下機能を失うリスクがあります。消化管の移植などでのど部分の構造自体を再建できたとしても、声を出す機能を維持することは非常に難しいとされています。 今回は、頭頸部がんの治療において、発声を取り戻すための具体的な方法や、頭頸部がんにならないための予防法、病院選びのポイントなどについて、東京医科歯科大学病院 頭頸部外科・教授の朝蔭 孝宏先生に教えていただきました。

 

頭頸部がん治療の成績:東京医科歯科大学病院の場合

 

 

頭頸部がんの治療法の1つであるELPS(内視鏡的咽口喉頭手術)が適用になるケースは、比較的早期に発見される場合であり、疾患特異的生存率では90%以上と、非常に良好な成績となっています。

ステージ3では7割程度の生存率ステージ4になると5割強の治療成績となっています。

 

 

発声に向けた治療法:「食道発声法」で声を取り戻す

 

 

進行した下咽頭がんで喉頭を合併切除した人は、「失声」の状態になります。

つまり、声が出なくなるのです。

その後のコミュニケーションは、手術直後は筆談になりますが、その後はいくつかの方法があります。

 

1つは「食道発声法」です。

空気を一回飲み込んで腹圧で出すときに、移植した空腸の周囲が代用の声門となります。

それによって発声することができます。

各地域に同じ疾患を患って手術した先輩患者さんたちが先生となって、食道発声法を教えてくれる会があります。

そこで具体的な方法を教わってトレーニングをすることで、発声を取り戻すことができます。

ただし、トレーニングにはかなりの時間が必要であり、なかなか発声を取り戻すことができない人もいます。

 

食道発声法で声を取り戻すことが難しい人に対しては、「永久気管孔」という穴を、ネクタイの結び目辺りに造設します。

その後ろ側にちょうど食道あるいは移植した空腸が位置しますが、開けた気管孔から食道へ向かって鉄アレイ型のチューブを挿入します。

このチューブは一方通行で、気管から食道に空気は抜けますが、反対に食道から気管へは食べ物や水が流れ込まないようになっています。

この気管孔を指で塞ぐことによって、吐いた息が食道の方へと流れます。

それによって食道発声法がスムーズに行えるようになります。

これを「気管食道シャント法」と呼びます。

 

その他の発声法として、機械を用いる方法があります。

手で握れるサイズの小さいマイクを首に当てて、振動させて声を出すという方法があります。

 

 

頭頸部がんの予防法:まずは禁煙!飲酒習慣の見直しも必要

 

 

頭頸部がんの予防には、何よりもまず禁煙が重要です。

電子たばこも含めて禁煙を徹底することが大切です。

 

日本人を始めアジア人の中には、お酒を少量飲んで顔が赤くなる人が4割程度います。

このような体質の人は、たしなむ程度の飲酒はOKですが、毎日の晩酌などを長年継続することで下咽頭がん・食道がんの発生リスクが高まります。

お酒との付き合い方を十分に検討することも、頭頸部がんの予防には重要です。

 

また、3つ目のリスクであるヒト乳頭腫ウイルスによる中咽頭がんの予防ですが、不特定多数との性行為は止めることが大切です。

 

 

頭頸部がんの治療における病院選びのポイント:日本頭頸部外科学会のHPを参考に!

 

 

頭頸部がんを疑った時、治療する病院を選ぶ上でまず、参考になるのが「日本頭頸部外科学会」のホームページです。

全国に頭頸部がん専門医の認定施設があり、そのリストが掲載されています。

かなり厳しい試験を通った頭頸部がん専門の医師がいる施設が分かるため、それを参考にしながら近隣の医療機関を受診してみるのがベターです。

 

 

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