インフルエンザの検査は、日本では鼻咽頭ぬぐい液を用いた迅速抗原検査が主流です。
新型コロナウイルスにも行われているPCR検査を行うこともできますが、一般の病院ではほとんど行われていません。
また、インフルエンザの流行状況、接触歴、典型的な症状をみて、臨床的にインフルエンザと医師が診断することも可能です。
インフルエンザの治療原則は、「早期診断・早期治療」です。
治療には抗インフルエンザ薬を用いますが、発症後48時間以内に投与した方が良いといわれています。
発症後48時間を経過している場合や症状が軽快している場合は、対症療法を行い経過観察します。
しかし、重症化リスクのある方や症状が持続している場合には治療の検討が必要です。
インフルエンザは自然軽快する(Self-limited)疾患のため、ウイルスが体内に入り込み増殖しても、宿主の持つ免疫によって次第に減少・消失します。
抗インフルエンザ薬を投与すると、自然軽快よりも速やかに体内のウイルス量を減らすことができます。
そのため、症状の緩和、罹病期間の短縮、合併症の防止、周囲への伝播抑制の効果があります。
現在、日本では5種類の抗インフルエンザ薬があり、世界で最も種類が多いです。
ノイラミニダーゼ阻害剤には、タミフル(一般名:オセルタナビルリン酸塩)、リレンザ(ザナミビル水和物)、イナビル(ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)、ラピアクタ(ペラミビル水和物)の4種類があります。
タミフルは経口薬です。
リレンザ、イナビルは吸入薬です。
副作用は少ないですが、肺炎などの呼吸器症状が強い場合は十分に吸入することができないため、使用を避けた方が良いといわれています。
ラピアクタは注射薬です。
重症や入院中、食事ができない場合に適しています。
キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤には、ゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)があります。
1回経口投与すれば良いため、非常に有用です。
ラピアクタを除いたタミフル、リレンザ、イナビル、ゾフルーザは、発症前の予防投与としても効果があります。
2009年のインフルエンザ A(H1N1)pdm09型によるパンデミックの際、タミフル・リレンザ等のノイラミニダーゼ阻害剤を服用開始した日数(発症後2〜5日目)と生存率を調べたアメリカの研究があります。
その結果、抗インフルエンザ薬を早期に服用すればするほど生存率が高くなっています。
このパンデミックの際、アメリカでは死亡数が推定1万2000人、人口10万対死亡率は3.96でした。
一方、日本では死亡数 198人、人口10万対死亡率 0.15で世界で最も低い値でした。
また、妊婦はインフルエンザの重症化リスクがありますが、アメリカでは死亡数 56人、日本では死亡数 0人でした。
抗インフルエンザ薬の使用率は、アメリカ、日本ともに9割前後でしたが、発症後2日以内の使用率が日本は約9割であるのに対して、アメリカは半数以下と大きく異なっていました。
当時、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、「5日間自宅療養して症状が軽快しない場合は病院を受診する」という方針を出していたため、結果的に多くの方が亡くなってしまいました。
この事例から分かるように、インフルエンザの早期受診・早期治療が重要です。