日本呼吸器学会では2015年からインフルエンザ・インターネットサーベイを行っています。
これは各医療機関でインフルエンザと診断されて肺炎もしくは入院となった16歳以上の方、つまりインフルエンザで重症となった方を登録し解析しています。
インフルエンザの重症化に繋がる病態は、肺炎が半数程度を占めており、次いで喘息・COPD・間質性肺炎などの慢性肺疾患を持っている場合です。
また、心不全・尿路感染・腎不全や、小児ほど多くないですが成人でも脳症によって重症化する場合があります。
アメリカ感染症学会(IDSA)の発表によると、インフルエンザで重症化を起こしやすいのは5歳未満の幼児、65歳以上の高齢者となっています。
また、慢性の肺疾患・心疾患・腎疾患・肝疾患・血液疾患・代謝性疾患・神経疾患のある方、免疫抑制状態の方、妊婦及び産褥婦、アスピリンを服用している方、高度肥満者、ナーシングホームなどの長期療養施設入居者も重症化リスクがあります。
日本のガイドラインでは、胆がん患者も含まれます。
重症化を起こす病態にはウイルス性肺炎もありますが、二次性の細菌性肺炎が多いです。
そのため、一般的な肺炎治療と同様に抗菌薬での治療が中心となります。
また合併症がある場合には、それぞれの病態に対して治療を行います。
インフルエンザの発症早期であれば、抗インフルエンザウイルス薬を用いた治療も併用していきます。
重症化リスクがある方は、インフルエンザワクチンを毎年接種することをおすすめします。
重症化リスクを持つご家族がいる場合や医療従事者も、ワクチン接種を推奨します。
一般的な肺炎の原因菌で最も多いのは肺炎球菌のため、高齢者や基礎疾患のある方はインフルエンザワクチンとともに肺炎球菌ワクチンも接種することをおすすめします。
咳エチケット・手洗いは呼吸器感染症予防の基本であるため、流行期には徹底して行いましょう。
アメリカ疾患予防管理センター(CDC)の調査によると、インフルエンザワクチン効果はシーズンによって差がありますが、ワクチンを接種しなかった方に比べてワクチンを接種した方はインフルエンザの発症が20〜60%少ないことが分かっています。
また、ワクチンの効果は年齢によっても差があり、小児や若い方には高い効果がありますが、高齢者ではやや低下します。
ウイルスのタイプによっても差があります。
ワクチンはA(H1N1)pdm09型には高い効果がありますが、A(H3N2)型という高齢者に多いタイプには効果が低いです。
ワクチンを接種しても効果は必ずしも十分ではありませんが、重症化を予防するためにワクチン接種を行うことをおすすめします。