インフルエンザの現況と予防:新型コロナウイルスとの違いは?

発熱・咳などの症状がみられるインフルエンザ。 新型コロナウイルスと見分けがつきにくく、その年によってA型・B型など異なるタイプが流行します。 2023年度の発生状況や検査・ワクチン接種などについて、川崎医科大学 臨床感染症学教室 教授の大石 智洋先生にお話を伺いました。

 

インフルエンザと新型コロナウイルスの違い

 

 

季節性インフルエンザは例年12月〜3月に流行しますが、2023年度は9月頃より感染者数が増え始め、11月時点で昨シーズンのピークを超えている状況です。

 

インフルエンザと新型コロナウイルスには次のような症状がありますが、症状が似ており区別がつきにくい特徴があります。

気道症状:咳、のどの痛み、鼻水

全身症状:熱、頭痛、筋肉痛・関節痛、だるさ

 

両者でまず違うのはウイルスの排出時期です。

新型コロナウイルスは症状が出る前からウイルスを排出するため、感染力が高くなります。

それに対して、インフルエンザは症状が出始めてからウイルスを排出します。

 

2つ目の違いは検査時期です。

新型コロナウイルスは、症状が出る前や無症状の場合でも検査で陽性となる可能性があります。

インフルエンザは潜伏期間が1〜3日間あり、症状が出始めた後にウイルスを排出するため、発症してから12時間後から48時間以内の検査が望ましいとされています。

また、抗ウイルス薬はウイルスが増えるのを防ぐ目的があるため、48時間以内に服用するのが効果的です。

 

3つ目の違いは感染様式です。

新型コロナウイルスは、空気中にウイルスが漂うエアロゾル感染が認められています。

インフルエンザは咳やくしゃみによる飛沫感染が主な感染経路です。

飛沫感染を防ぐためには、話し手がマスクを着用し人に移さないことが有効です。

 

インフルエンザの集団感染は保育園や学校で多く、子どもがマスクを着用するのは難しいかもしれませんが、症状がある人がマスクを着用することが感染対策に重要です。

 

インフルエンザの集団事例(東京都)

 

 

インフルエンザの予防接種

 

 

インフルエンザワクチンは、ウイルスの毒性をなくした不活化ワクチンです。

ワクチンの予防効果は、接種後2週間頃から現れ始め4週間後にピークに。

接種後の免疫は5〜6ヶ月持続します。

 

インフルエンザワクチンは発症予防効果もありますが、重症化の予防効果が高くなっています。

そのため、重症化リスクの高い高齢者、乳幼児、慢性疾患のある人などはワクチン接種で予防することが重要です。

 

インフルエンザにはA型、B型等さまざまなタイプがあります。

昨シーズンに最も多かったA型(H3N2)タイプとは異なり、2023年度はA型(H1N1)タイプが流行しています。

これまでにかかったことのないタイプは免疫を持っていない可能性があるため、早めに予防接種をすることが大切です。

 

 

インフルエンザ感染予防に大切なこと

 

 

海外では日本で流行していないインフルエンザB型も流行しています。

海外から日本を訪れる旅行者が急増しており、国外からインフルエンザが流入する可能性もあるため注意が必要です。

 

小児ではインフルエンザに感染した後に急激に悪化するインフルエンザ脳症が多くみられます。

インフルエンザの症状に加えて呼びかけに答えない、意味不明な言動、持続性のけいれんなどが現れる場合は注意してください。

 

インフルエンザにかかる人が増えるほど重症化する人も増えるため、多くの人が予防接種をして集団免疫をつけることが重要です。

 

 

 

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