新型コロナワクチンの定期接種とワクチンの内容について

2024年10月1日より、新型コロナワクチンの定期接種が開始となりました。 接種を希望される方には、いくつか確認しておいたほうがよい変更点などもあります。 今回は、川崎医科大学附属病院 感染管理室室長 大石智洋先生より、これまで行われてきた臨時接種との違いや、今回使用されるワクチンの種類、効果や副反応などについてお話を伺いました。

臨時摂取と定期摂取の違いについて

新型コロナワクチンの定期接種が10月1日から開始になりました。新しいタイプを含めて、5種類のワクチンがあります。

この新型コロナワクチン、2024年度から定期接種になりますが、昨年度までとの違いを簡単にまとめます。

 

まず昨年までは、特例の臨時接種でした。また、ワクチンの内容も異なっていて、XBB系統というものが、今年度からJN1系統の株となっています。接種費用は無料でしたが、定期接種では一部自己負担があります。

接種時期は、特例の臨時接種は2024年の3月まで、定期接種は、2024年10月1日から2025年3月31日までです。接種の対象者は、特例の臨時接種は生後6ヶ月以上の方全てだったのが、定期接種では、65歳以上の方、もしくは60から64歳で心臓、腎臓、呼吸器の機能、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能の障害があって身体障害者手帳1級程度の方などになっています。

 

今流行っている新型コロナウイルスは、オミクロン株です。このオミクロン株の中にもJN.1やKPⅢなど色々系統があり、今、オミクロン株の中でも、KPⅢが一番流行っています。

このKPⅢというのは、ワクチンの中に含まれてJN.1と同じ系統になります。ちなみに、昨年までのワクチンに入っていたXBB系統というものとは全く違う系統になっていますので、本年度JAN.1系統のワクチン接種というのは、今の流行からしても意味があることだと考えます。

 

5種類のワクチンの概要

抗原株は、SARS-CoV2オミクロン株JN.1系統で、全て同じ系統の株です。

ただ、もう少し抗体別種類に大別すると、今まで多く接種されてきたメッセンジャーRNA(以下、mRNAと略)ワクチンのみならず、この組み換えタンパクワクチンというものと、mRNAの中でも、レプリコンワクチンというものもでてきています。

 

mRNAは、今まで皆さんが接種されてきたと思いますが、改めて説明すると、細胞の中で、DNAが持つ遺伝子の情報を写して、タンパク質を作る設計図のようなものです。mRNAを摂取すると、それが設計図になっているので、設計図を基に皆さんの体の中でウイルスの抗原(タンパク質)が作られます。このウイルスの抗原そのものが、皆さんの免疫のターゲットとなります。それで免疫システムで、ウィルスに対する免疫がつく、このような仕組みがmRNAワクチンとなっています。

 

今までのワクチンとの違いについても説明します。今までのワクチンは、ウイルスの抗原タンパク質そのものを接種していたのですが、mRNAだと、設計図を入れて、それをもとに皆様の体の中で、自身でこのウイルスの抗原、すなわちタンパク質を作る、という形になります。そこが違うところです。

 

今年度のワクチンの接種対象にもなっています、ヌバキソビットというのが、組み換えタンパクワクチンとなります。

先ほどのものはmRNAが入っていたのですが、このヌバキソビッドは、スパイクタンパク質の抗原そのものが入っています。

このタンパク抗原と、もう一つは、免疫の活性化をさらに強くするアジュバントと呼ばれるマトリックスMというものが入っております。

 

すなわちmRAではなくて抗原タンパク質そのものが入っているということになるのですが、このタンパク質とアジュバントの組み換えタンパクワクチンというのはすでに、B型肝炎ウイルスワクチンやインフルエンザウイルスワクチン、そして帯状疱疹ワクチンですでに実績があるものです。

 

続きまして、レプリコンワクチンです。既存のmRNAワクチンでは、mRNAワクチンを一つ接種すると、そこから一つの抗原タンパク質、つまりウイルスの抗原が皆様の体で作られるということになります。

このレプリコンワクチンは、mRNAの中にレプリカーゼというものが含まれていて、ここから、一つでなく複数のmRNAが作られます。複数のmRNAから複数の抗原タンパク質ができるということになるので、同じ量からさらに多くの抗原タンパク質が作られることが可能になります。理論的に言えばこの抗原タンパク質から免疫反応が起きるので、同じ量でもかなり強く、免疫反応が起こると予想される、これがレプリコンワクチンの特徴になります。

 

ワクチンの実際の効果について

今シーズンからのJN.1系統のワクチンはまだ実際接種されておりませんので、あくまでも非臨床試験(ネズミを使った実験)で、接種して抗体がどれくらいついたかについて説明します。

 

このJN.1の成分を含むワクチン接種は、XBB対応株すなわち昨シーズンのワクチンと比較して、JN1に対して誘導される中和抗体価が、大体約2倍から10倍高かったということで、昨シーズンのワクチンと比較して十分、今流行ってるKPⅢの系統に効果が期待できるということがわかっています。

 

すなわち、このJN.1系統の他の系統に対してJN.1と同程度の中和抗体価の上昇が期待できるというのがこのKPⅡ、KPⅢでもわかっております。なぜかと言いますと、JN.1とKP2,K PⅢというのは同じ系統ですので、JN.1に対して中和抗体価すなわち免疫強度が高いということは、今流行ってるKPⅢにも十分な免疫応答が期待できます。

 

ワクチン接種時の副反応について

昨シーズンは、特に安全性には懸念がなかったといわれています。この安全性ですが、こちらも昨シーズンのワクチンより、全体副反応の報告があります。疑いも含めてですが、副反応疑い報告、そのうち重篤報告、死亡報告になっていて、数字は接種回数によって変わるので、かなり低い%になっています。

 

ファイザーやモデルナに関して、小児、成人両方についてもかなり低い%になっています。

第一三共、mRNAワクチン、武田は組み換えタンパクワクチンですが、副反応の重篤死亡がかなり低いです。

 

副反応として実際に皆様が体験されるのは、発熱や痛みだと思いますが、順天堂大学のコロナワクチン研究事務局が、昨シーズンのオミクロンのXBB対応ワクチンの接種後の反応について、ファイザー社、モデルナ社、第一三共社、武田社それぞれについてまとめているので、接種していただくときの参考にしてもらえればと思います。

 

これは、同時に行ったわけではないので単純比較できないですが、今期からのレプリコンワクチンに関してはまだ接種実績がないので、あくまでも臨床試験のデータしかないですが、軽い、重い、も含めて、重篤な有害事象は認められませんでした。

 

新型コロナウィルス感染症の現況

次に、新型コロナウイルス感染症の現況については、9月20日までの最新のデータで、報告数、入院数ともに減少していますが、まだまだ予断を許さない状況です。

また、昨年から見ても大体1年に2回流行がありますので、今後もしっかりと、特に高齢者などのリスクの高い方はしっかりワクチンで予防して、新型コロナウイルスの重症化を防ぐということも検討していただきたいです。

 

定期摂取についての再確認と全体のまとめ

本年10月より、来年3月まで、予防接種法のB類疾病としての新型コロナワクチン接種が開始されます。

現在5種類の新型コロナワクチンが使用可能になっていて、これまでのmRNAワクチンの他レプリコンワクチンや組み換えタンパクワクチンも承認されています。

 

いずれの新型コロナワクチンも現在流行している新型コロナウイルスと同系統のJN.1対応株ワクチンで非臨床試験上ですが、いずれも効果が期待できる結果になっております。

昨シーズンのXBB対応新型コロナワクチンのデータでは、日本国内では接種による入院予防効果が50%前後となっており重篤な副反応は見られておりません

 

以上を踏まえまして、新型コロナワクチンについて、その接種やワクチンの種類などをご検討されて、ご不明な点等は、接種実施医療機関にお問い合わせいただければと思います。

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