ロタウイルス胃腸炎は、ロタウイルスによって引き起こされる急性胃腸炎です。
特に5歳までの乳幼児にかかりやすい病気です。
5歳以下のお子さんで急性胃腸炎のために入院された方のうち、約半数がロタウイルスによる胃腸炎であり、比較的よくみられます。
症状としては、胃腸炎に特徴的な下痢、吐き気・嘔吐、発熱、腹痛などがあります。
特に5歳以下のお子さんが初めて感染すると重症化しやすい傾向にあります。
下痢や嘔吐などから脱水症状を起こし、外来での点滴や入院が必要となる場合があるため注意が必要です。
周囲でロタウイルスに感染したお子さんが多いといった状況や症状などから、ロタウイルス胃腸炎の診断につなげていきます。
確定診断のためには、抗原検査を行います。
抗原検査は保険適応の検査です。
この検査では便を調べ、15〜20分程度でロタウイルスの有無が判定できます。
ただし、抗原検査は採取方法やウイルス量などによって陽性と判定されないことが稀にあるため注意が必要です。
最終的には、症状や検査結果を総合的に判断して診断します。
現在のところ、ロタウイルスに効果のある抗ウイルス薬などはありません。
ロタウイルスによる脱水症状が生じた場合は、水分補給の治療を主に行います。
下痢がひどくなる場合もありますが、下痢はウイルスを身体から排出しようとする生体反応です。
下痢止めのお薬を用いて下痢を止めてしまうと、ウイルスが身体に残ってしまい、完治が遅くなる場合もあるため使用しないことが望ましいでしょう。
ロタウイルス自体は世界中で起こっている感染症です。
医療機関が整備されていない発展途上国などでは、ロタウイルス胃腸炎による脱水症状がひどくなり亡くなってしまうお子さんも多くいます。
しかし日本では医療機関へのアクセスが良いため、脱水症状が生じてもすぐに点滴治療などが行えるため、重症化を防いでいます。
ただし、ロタウイルスは胃腸炎を起こすだけでなく、稀にけいれん、脳症、意識障害などを起こす場合があります。
ぼーっとしていて呼びかけに反応しないなどの意識の低下がある場合や、けいれんがみられる場合などは速やかに医療機関を受診してください。
ロタウイルス胃腸炎は3〜5月を中心とした上半期に流行しやすい病気です。
ただし、新型コロナウイルス感染症が流行してから現在のところ、手洗いなどの感染予防行動が向上したため、ロタウイルス胃腸炎の発症はほとんどみられていません。
また、2020年10月よりロタウイルスの予防接種が定期接種となったことも影響しています。
ロタウイルスワクチンには、1価と5価の2種類のワクチンがあり、いずれも生ワクチンです。
お腹の免疫をよくすることが胃腸炎には重要なため、お口から飲む形状のワクチンとなっています。
ロタウイルス感染症は特に乳幼児が重症化しやすく、子どもの重症化を防ぐために、ワクチンが開発され定期接種が推奨されています。