熱中症とは:症状や予防、COVID-19との違いを解説

暑い時期にリスクが高まる熱中症。2024年の夏はCOVID-19感染も増えており、両者の違いや対策がわからないという人も多いのではないでしょうか。今回は熱中症の症状や予防、COVID-19との違いについて、川崎医科大学 臨床感染症学教室 教授、川崎医科大学附属病院 感染管理室 室長の大石 智洋先生にお話を伺いました。

熱中症とは?

熱中症とは、高温多湿な環境下で体温が上昇したにも関わらず体温調節機能がうまく働かず、体内に熱がこもってしまう状態です。それにより、血液の循環が悪くなり、重要な臓器が障害されてしまいます。

 

私たちの体には、運動や暑熱環境下でも体温の急激な上昇を抑えるために体温調節機構が備わっています。具体的には「汗をかく」「皮膚表面から外気へ熱を逃す」ことによって、適切な体温を保っているのです。

 

しかし熱中症になると、このバランスがくずれ、さまざまな症状を引き起こします。

 

熱中症が起こる要因

熱中症の要因には「外気温」「湿度」「輻射熱」の3つがあります。

 

「外気温」が高くなると体温が一時的に上がりますが、汗をかくことで体温を下げるように働きます。ただし、汗をかくと水分や塩分が体の外に出てしまうのです。不足した水分・塩分を適切に補給しないと、脱水状態がつづき、血液の流れが悪くなってしまいます

 

「湿度」が高いと汗が蒸発しにくくなるため、体内にたまった熱を逃しづらくなります

 

「輻射熱」とは日射しを浴びたときに受ける熱や、地面・建物などから出ている熱のこと。周囲からの熱を受けることでも、体温は上昇します

 

この3つの要素をもとに熱中症のリスクをわかりやすく数値で表しているのが「暑さ指数(Wet Bulb Globe Temperature: WBGT)」です。

暑さ指数が高いときは熱中症による救急搬送も増える傾向にあるため、上手に活用して熱中症を予防しましょう。

 

熱中症の重症度と症状

熱中症の重症度には3段階あり、対応が異なります。

 

重症度 Ⅰ 度(軽症)は、熱失神とも呼ばれます。主な症状は、立ちくらみこむら返りで、意識障害はありません。涼しいところで安静にし、水分補給で様子をみてください。

 

重症度 Ⅱ 度(中等症)は、熱疲労とも呼ばれます。主な症状は、意識がなんとなくおかしい吐き気・嘔吐頭痛です。高度の脱水と血液循環が悪くなっている状態のため、速やかに医療機関を受診してください。

 

重症度 Ⅲ 度(重症)は、熱射病とも呼ばれます。主な症状は、意識が明らかにおかしい40度以上の体温です。脳を含む重要臓器に障害が起きてしまい、命にかかわる危険性もあるため、速やかに救急車による搬送が必要です。

 

また、熱中症か判断に迷う場合や、応急処置をしてもよくならない場合は、医療機関へご相談ください。

 

熱中症とCOVID-19の鑑別

熱中症とCOVID-19では、いくつかの違いがあります。

 

1つは、発熱をきたした場所です。

屋外での労働・スポーツ、エアコンのない屋内などの暑熱環境にいて、何らかの症状が現れた場合は熱中症の可能性が高いです。

 

2つ目は、症状の違いです。

悪寒、鼻水、咽頭痛、咳、くしゃみ、声の枯れ(嗄声)がみられる場合はCOVID-19の可能性があります。

それに対して、意識障害がみられる場合は熱中症(中等症以上)の可能性が高くなります。

 

熱中症の予防

熱中症予防の基本は、体温の上昇と脱水を抑えることです。

 

体温の上昇を抑える方法として、衣服の工夫日陰に移動する、冷房を使うなど、暑さを避ける工夫をしましょう。

 

脱水を抑える方法としては、こまめな水分補給を意識しましょう。とくに、汗で失った水分と塩分を補うためのスポーツドリンクや経口補水液がおすすめです。

 

そのほかにも、普段から体調を整える無理をしない暑さ指数を参考にして熱中症対策を心がけましょう。

 

 

本サイトの利用にあたっては、当社の定める利用規約が適用されます。利用規約はこちらからご確認ください。