悪性胸膜中皮腫とは?原因の8割はあの物質!症状や治療法について

悪性胸膜中皮腫は、心臓や肺などの臓器を包む胸膜の表面を覆う「中皮」から発生した腫瘍です。悪性腫瘍の1つであり、1ヶ所に固まって発生しますが、胸膜に沿って広がるように発育するものもあります。症状としては呼吸困難や胸痛、咳などが見られますが、これらは中皮腫に得意的な症状ではないため、早期発見が難しい疾患です。 今回は、悪性胸膜中皮腫の具体的な症状や原因、検査方法やその後の治療法などについて、国立病院機構山口宇部医療センター・呼吸器外科の岡部 和倫先生に教えていただきました。

 

悪性胸膜中皮腫とは?:原因の8割はアスベスト!吸入により発症もメカニズムは不明

 

 

「中皮腫」とは、臓器の表面や体壁の内側を覆う膜の表面に存在する「中皮腫細胞」に由来する悪性腫瘍です。

厳密には「がん」ではないのですが、悪性腫瘍に類されます。

 

 

石綿(アスベスト)による疾患

 

 

中皮腫は、胸膜腹膜心膜精巣漿膜に発生しますが、8~9割胸膜に発生し、腹膜が1割、心膜・精巣漿膜に発生するのは稀です。

 

悪性胸膜中皮腫の患者さんは、息切れ胸痛といった自覚症状で来院されることが多いようです。

また、健診などの胸部レントゲン写真で、胸水の貯留や胸膜の肥厚を指摘されて受診するケースも多く見られます。

さらに、他の病気を精査するためのCT検査中に、胸水貯留・胸膜肥厚が指摘されることもあります。

 

中皮腫の約8割は、アスベスト(石綿)の吸入が原因とされていますが、アスベストによる発症のメカニズムは未だ解明されていません。

建築業・配管業・電気工事・造船業や鉄道車両工場で勤務していた人など、アスベストを吸入しやすい環境で仕事をしていた人に発症する可能性が高いと考えられています。

 

 

悪性胸膜中皮腫の検査法:胸水を注射で採取、状態が良ければ病理組織検査も

 

 

悪性胸膜中皮腫では、胸部に水が溜まる、いわゆる「胸水」が多く見られます。

胸水が見られる場合には、胸水を注射針で排液して、細胞診などの検査を行います。

さらに次の段階として、胸膜の組織を採取して、病理検査(顕微鏡検査)を行います。

これを「胸膜生検」と言います。

患者さんの状態が良好であれば、胸水の細胞診だけでなく、胸膜の組織検査も行うべきであると考えられています。

 

 

悪性胸膜中皮腫の集学的治療法:手術や放射線・抗がん剤を組み合わせて行う

 

 

悪性胸膜中皮腫の治療の概略

 

 

悪性胸膜中皮腫の集学的治療法では、手術や放射線・抗がん剤を組み合わせる方法や、手術と抗がん剤を組み合わせる方法があります。

2018年8月から免疫チェックポイント阻害剤「ニボルマブ」抗がん剤治療後の二次治療に加わりました。

 

 

悪性胸膜中皮腫の外科治療:肺全摘か胸膜切除か?

 

 

胸膜肺全摘出(EPP)と胸膜切除・肺剝皮術(P/D)のイメージ図

 

 

悪性胸膜中皮腫の外科治療として行われる、胸膜外肺全摘術(EPP)」は、肺・臓側胸膜、壁側胸膜、横隔膜、心膜をひと塊として切除し、横隔膜・心膜を人工の膜で再建する手術です。片側の肺は全摘されます。

 

また、「胸膜切除剥皮術(P/D)は、臓側胸膜・壁側胸膜を切除する手術で、横隔膜と心膜は必要に応じて切除・再建を行います。

山口宇部医療センターでは、患者さんの心肺機能が良好で、手術が可能であると判断された場合には、EPPを行う方針です。

経験の浅い外科医がEPPやP/Dを行うと、腫瘍が切除しきれずに遺残したり、手術中に腫瘍細胞が拡散してしまうことがあります。

さらに、手術時間が長引いたり出血量が増加したりして、患者さんの全身状態が悪化する場合があります。特にEPPの場合、片方の肺を全摘出しているため、不適切な術後管理を行なった場合には、長期の予後が認められない場合もあります。