肺高血圧症の診断と治療法:診断や治療で気を付けるべき点は?

肺高血圧症は、体質や環境因子など複合的な要因でかかる疾患ですが、原因不明なケースも多くあります。「息切れ」といった自覚症状で受診する人が非常に多く、重症度は様々です。 今回は、肺高血圧症の診断から治療に至るまで、実際に罹患したときの留意点などについて、杏林大学医学部附属病院 循環器内科・教授の佐藤 徹先生に教えていただきました。

 

肺高血圧症の診断・治療:カテーテル検査が必須、基本は薬剤治療

 

 

肺高血圧症の専門施設で行なう場合、カテーテル検査の種類はいくつかあります。

そのうち、静脈から挿入する検査に限定して行なう場合が多く、それを「肺動脈カテーテル検査」と呼びます。

したがって、肺動脈から挿入するカテーテル検査は、「少し大掛かりに行なう程度」と考えて良いでしょう。

 

検査後も採血と同様、管を挿入するために針を刺した場所をしばらく押さえておくだけで止血可能です。

検査が終わればそのまま帰宅することが出来る程度の検査ですから、それほど大きな負担を感じずに受けることが出来るかと思われます。

カテーテル検査は肺高血圧症の確定診断に必要な検査であり、検査を受けることでより有効な治療が行えるでしょう。

 

 

一方、肺高血圧症は、患者さんの罹患頻度が少ないため、治療薬は非常に高価で、普通の保険のみで払い切ることは不可能です。

そのため、厚生労働省は指定難病に対する医療費助成制度を進めています。

これを利用すると医療費はほとんどかかりません。

 

 

つまり、肺高血圧症の治療は、カテーテル検査を行なった上で確定診断がついてから、開始されます。

治療自体は基本的に薬剤治療となりますが、原因によってはカテーテル治療が必要な場合もあります。

 

また、薬物治療の反応が非常に悪い場合は、肺移植という手術も考慮しなければならないことがありますが、頻度は非常に少ないようです。

 

肺高血圧症の診断アルゴリズム - 専門施設に紹介するまで -

 

 

現在、薬物治療は非常に進歩しており、患者さんの改善度は上がっています。

20年前には5年生存率が3割程度でしたが、現在は9割を超えるまでに改善しています。

 

しっかりと治療に取り組む必要はありますが、ある程度は安心して治療に臨んで欲しいと思います。

 

 

肺高血圧症における日常生活での留意点:運動の「スピード制限」がポイント

 

 

肺高血圧症に罹患した人が日常生活を送る上で、一番重要なのは運動量の制限です。

運動量の制限といっても、運動する「量」ではなく「スピード」を制限します。

 

これによって、傷ついている肺動脈の部分の負担をなるべく減らすことができます。

動くスピードが速く、短時間に多くの血液が流れてしまうと肺動脈の負担になるため、肺動脈に血液をゆっくり流すようにすることが重要です。

肺動脈への負担を増やさないようにして、悪化を防ぎ、治癒を早めます。

 

重要なのは、肺動脈カテーテル検査を受けていただき、正確に重症度を把握した上で、それに合った薬剤と適切な運動スピードを決めることです。

 

非常に重症な場合は車椅子で移動しなければ改善しない場合もあるため、注意する必要があります。

 

 

 

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