安全なロボット手術(ダビンチによる手術)は、10年以上も前から心臓弁膜症の手術に使われてきました。
しかしロボット手術に健康保険が使えなかったことから、自由診療(自費)で受けるしか方法がなかったのです。
そのために患者さんがロボット手術を受けると、400万円近くを自己負担で支払っていました。
それが2018年4月より健康保険を使ってロボット手術※1が受けられるようになったのです。
この結果、小切開※2で行ってきた手術を、ほぼ全例ロボット手術で行うようになりました。
いまのように健康保険が使えるようになってから、心臓弁膜症の状態によりこの患者さんだから小切開手術をするまたはロボット手術するというようなわけ方をしていません。
まず基本的には、全員ロボット手術で行うにようにしています。だから、週4件〜5件がロボット手術になったのです。
ロボット手術の特徴は、穴を4つだけ開ける手術、小切開手術より劇的に出血量が少なく痛みが無い、手術時間は小切開手術とほぼいっしょであることです。
※1 健康保険を使ってロボット手術:日本でロボット手術が健康保険で支払えるようになったのは、2012年の前立腺癌全摘、2016年の腎がんの部分切除だけでありました。そして2018年4月に、胃・食道・直腸・肺がん・膀胱がん・子宮・心臓の弁などが新たに追加されました。現在の心臓弁膜症では、僧帽弁形成術と三尖弁形成術が保険適応となっています。
※2 小切開:心臓の手術は、胸の中央を切る正中切開がほとんどありましたが、患者さんへの襲撃を低くするために肋骨と肋骨の間を5〜10cm 切る小切開手術が登場しました。
ロボット手術を内視鏡だけで行っている施設は、日本でもそう多くないと思っています。
心臓弁膜症の手術は、穴を開けて行うロボット手術だからこそ意味があります。今までの心臓外科では内視鏡によるロボット手術の経験がないため、内視鏡でいきなりロボット手術ができる外科医がまずいないのです。
それから小切開によるロボット手術を行っている限り、小切開手術によるメリットと変わらないといえます。
つまりロボット手術でできる手術とは内視鏡ですべてが終わるからこそ意味があるため、小切開で普通の内視鏡を使ったロボット手術では、メリットを得ることは不可能であります。
このようなことから、次の診療報酬改定※3には内視鏡で行ったロボット手術だけがロボットを使った手術としてみなすことにならないとおかしいのです。
それだけ精緻な手術ができるロボットを使うことで、穴を開けるだけで手術ができるロボット手術の時代がやってきたことになります。
※3 診療報酬改定:通常、医療機関にかかったとき、診療費や検査代それに薬代などに対して健康保険を使って支払います。このときの診療費などは国で決めており、2年に1回見直されます。
内視鏡を使ったロボット手術は、外科医にとっても患者さんにとっても大きなニュースになっています。
患者さんには、予想をはるかに上回る回復力であると喜ばれています。
さらに、内視鏡を使ったロボット手術を行っている我々も驚くぐらいこれまでとの違いがわかり、さらに小切開手術との違いを実感しています。
心臓弁膜症の手術は、いろいろな原因で患者さんは悩みます。
それは、今の主治医の説明している内容が不足しているため理解できないこと、患者さんが治療しているいまの病院で手術していいものかの2つです。
その病院では、最近の情報公開によって手術件数の少ないことがわかるので受けてもいいものかと悩む患者さんがいます。
そのときは、我々がセカンド・オピニオンを受け付けています。
また、心臓弁膜症の手術を1回受けて上手にいかず、それから相談に来られてもあとの祭りになるから、手術を受ける前にセカンド・オピニオンのところへ行き、真剣に考えてください。
心臓は1個しかありません。
患者さんの多くは、セカンド・オピニオンに相談することを主治医の先生に悪いと思っています。
そうではありません。
ご自身あるいは大事な人の手術になることから、納得した上で理解して手術を受けて欲しいです。
疑問に思っていることは、ほかの医師の意見をよく聞いて納得して欲しい。
医師に対する遠慮はいらないと思います。