心臓弁膜症は、大動脈弁狭窄症と僧帽弁閉鎖不全症の2つに大きくわけることができます。
大動脈弁狭窄症※1は、動脈硬化症をもった患者さんが合併しやすい病気です。
症状として、胸が痛い・ふらつく・失神する・息が切れる(2階から3階に上がったときなど)・夜中の尿意(夜中にどうしてもトイレに行きたくなる)などがあります。
僧帽弁閉鎖不全症※2は、比較的若い人に発症しやすい病気です。
症状として、無症状(若い人が罹りやすいから)・咳(肺に水が溜まりやすいから)・夜中の尿意(夜中にトイレに行きたくなる心不全症状)・動悸(不整脈により)・脈が早くなる(不整脈より)などがあります。
さらに僧帽弁閉鎖不全症の場合、脈が早くなったと訴えてくる患者さんが、無症状のわりに意外と最初に出てきます。
このような心臓弁膜症には、胸が痛い・脈が早い・夜中の尿意など、いろいろな症状が現れてきます。
※1大動脈弁狭窄症:心臓の出口にある大動脈弁が開き難くなる病気。また高齢化とともに増加している病気。
※2僧帽弁閉鎖不全症:心臓の僧帽弁が上手く閉じれなくなり、血液が逆流を起こす病衣。最近、増加している心臓弁膜症。
心臓弁膜症は、患者さんが症状に気がつき訴えたところからはじまります。
つまり心臓弁膜症の症状があれば、心電図・レントゲン・エコー検査(心臓超音波検査)の3つの検査により弁がどのような状況になっているか、診断が比較的スムーズに進みます。
実際、弁を置き換える手術は、「症状があり」「エコー所見(異常の有無)」が揃い診断した後に、勧めることになります。
これとは別に、僧帽弁閉鎖不全症の場合、心臓のなかで逆流している血液量が非常に高度になっているか、あるいは逆流が50%以上になっているかによって手術するか決まります。
また僧帽弁閉鎖不全症を手術する判断は医師の考え方によって違うことがありますが、重要なことは心臓のなかで逆流している血液量です。
つまり僧帽弁閉鎖不全症の患者さんは、弁を治さない限り完治することができないと考えられています。
最近になって、心臓弁膜症の治療でカテーテルによって弁を入れ替えることができるTAVIという治療法が登場してきました。
日本では、ここ10年くらいTAVIによる治療を行っています。
TAVIは、足の血管からカテーテルを通して心臓まで行き、そこで縮めておいた弁を拡げて異常になった弁と交換します。
いずれは、このTAVIという治療法にシフトしていくだろうといわれています。
しかし、まだまだTAVIには良い点と悪い点があります。
たとえば、若くて2個の弁が悪い人や狭心症でバイパス手術が必要な人の場合、外科手術といっしょにTAVIの同時手術が実施されることがあります。
このような外科的な治療では、80歳以上の男性と85歳以上の女性は耐えられないことができません。ところがTAVIを選択することで弁の置き換えることができるのです。
つまり、これがTAVIの良い点であり、年齢的なことが1番大きく関係しているところになります。
TAIVの悪い点は、カテーテルで置き換える弁より外科的に埋める弁の方が長持ちするため、若くて元気な人はしっかりとした外科的な治療で弁を置き換えた方がいいのです。
このようなことから心臓弁膜症の治療は、症例の状況によって外科的な治療にするか、あるいはTAIVにするか選択することになります。
現在、カテーテルを使うTAVIでもない、大きく胸を切る手術でもない、心臓弁膜症の治療方法が登場しました。
この治療方法を小切開心臓手術(MICS)と呼んでいます。
この小切開心臓手術(MICS)は、身体に優しい外科手術といわれています。
それは、肋骨(胸部の下)から6〜7cmだけ切開するだけで、胸部の中央から切開した場合と同じ手術ができるからです。
小切開心臓手術(MICS)は身体に対する影響が少なく出血や痛みも少ないことから、もし外科的な治療が必要になった場合、これを選択することができます。