心房細動の治療において最も重要な点は、抗凝固治療を行うかどうかです。
抗凝固治療薬としては、まずワルファリンです。
そして次に4種類の直接作用型抗凝固薬(DOAC)があります。
これらの薬の中から選択して、患者さんの塞栓症を予防するための抗凝固治療を行うか考えます。
次に、心房細動自体の治療について考えます。
まず選択するのは薬物治療です。
薬物治療は「レートコントロール」と「リズムコントロール」に分けられます。
リズムコントロールでは、抗不整脈薬を内服して、心房細動を抑えて洞調律を維持することが目的となります。
レートコントロールでは、心房細動が起こることを許容しながら、脈拍上昇を抑制することが目的となるため、カルシウム拮抗薬やβ遮断薬などが使われます。
ここで非常に重要なのは、レートコントロールとリズムコントロールのいずれを選んでも予後に差は無いということです。
そしてもう一つ重要なのは、薬物治療では心房細動は治らないという点です。
この治療法を続けていく限りは、一生薬を飲み続けることが必要であるということを理解しなければなりません。
3つ目の治療は、心房細動の根治を目的に行う治療です。
心臓外科で開胸術を行なって治すことを目指すか、循環器内科でカテーテルを用いてカテーテルアブレーション治療を行なうかの2択となります。
20世紀まで心房細動はほぼ不治の病でした。
2000年付近になってようやく、心房細動の原因が分かりました。
左心房に連結している肺静脈という血管から異常な電気が生じることで心房細動は起こると解明されたのです。
ここから、心房細動は治療可能な病へと変わってきたのです。
心房細動治療の一つであるカテーテルアブレーションとは、長い管であるカテーテルを心房に入れていって、左心房に開口している肺静脈の入口付近を熱を加えて焼いていく治療です。
つまり、肺静脈という血管を本体の心房から電気的に隔離するのです。
このような治療法を「肺静脈隔離術」と言います。
肺静脈隔離術は皮膚に針を刺すだけで非常に低侵襲な手術であるため、メリットは大きいと言えます。
また、現在は、肺静脈を焼いて治すだけでなく、バルーン(風船)を先端につけたカテーテルを挿入して、患部付近で膨らませ、それを用いて肺静脈の入口を冷凍凝固する「クライオバルーンアブレーション」という方法もあります。
さらに、バルーンを用いた治療法にもバリエーションができています。
高周波やレーザー光線で灼く方法があり、現在は一般的になってきています。