心不全の具体的な治療法は?CRT(心臓再同期療法)のメリットは?

心不全は、心臓や肺に水が溜まることで、心臓への負荷が過剰になり、息切れなどの症状が起こる病態です。慢性的な疾患ですが、入院が必要になることも多く、QOL(生活の質)に大きな影響を与えます。 今回は、心不全の具体的な治療法と、その中でもメリットの多いCRTという治療法について、日本大学医学部附属板橋病院 循環器内科の中井 俊子先生に教えていただきました。

 

心不全の治療方針:薬物療法がメイン

 

 

心不全の治療では、まず薬物療法をメインに行います。

心不全は、心臓あるいは肺に水が溜まってしまいうっ血している状態です。

この溜まっている水を外に排出するために、利尿薬を使用します。

利尿薬と同時に、心臓を保護する作用のある薬を少しずつ投与します。

 

急性心不全で、救急車で搬送されるようなケースでは、点滴治療が集中的に行われるため、このような慢性心不全の治療とは異なります。

 

 

CRT(心臓再同期療法)について:肥大した心臓の「ズレ」を整える

 

 

心不全の患者さんの心臓は肥大していることが多いとされています。

心臓は電気刺激によって自律的に動いている臓器です。

心臓が肥大すると、その電気刺激が心臓の組織を伝導していく速度が遅くなり、心臓のポンプ機能が不揃いな動きを起こしてしまいます。

例えば、本来ならば同時に伝わるはずが、一方が電気刺激を受けて今動いているのに、他方には伝導が遅くなり、ずれて動くというイメージです。

心不全の患者さんの心臓では、このようなアンバランスな動きが起こっていることがあります。

 

このようなズレを、人為的に電気刺激を加えることで解消するのがCRT(心臓再同期療法)です。

 

心臓再同期療法(CRT)の原理

 

CRTを使用すると、心臓から一回に拍出される量が非常に多くなるため、今までよりも体内を循環する血液量が増加し、結果的に心臓機能が向上します。

 

心臓再同期療法(CRT)

 

 

CRTの適応:刺激伝導に障害のある人に適応

 

 

CRTは、心室内での伝導障害がある人心臓内における電気の流れが弱っているような心不全患者さんに対して適応されます。

 

CRTの適応

 

 

CRTの治療効果:QOLの上昇が大きなメリット

 

 

CRTの治療を受けた後、目に見える変化としては、血圧の上昇がみられます。

また、心不全の症状の一つである息切れが軽減されるため、活発な生活が送れるようになります。

これらは、慢性的な心不全の症状に苦しむ患者さんにとって、大きなメリットになります。

 

もちろん、治療の翌日からすぐに改善されるわけではありませんが、1週間の入院期間の間に症状は大きく改善されることが分かっており、治療後1ヶ月経った時に心エコーを行うと、心拍出量が大きく改善している状況が確認されています。

 

CRTの治療効果を列挙すると、医学的には「運動耐用能」が上昇し、QOLが上がる、そして生命予後の改善も報告されているなど、メリットの多い治療方法です。

患者さんの中には、心不全で何度も入院していた人が、CRTの治療後は入院をしなくなった、というケースも数多くあります。

 

 

 

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