※本情報は、2020年6月時点の情報となります。前所属時の情報も含まれておりますので、予めご了承ください。
過敏性腸症候群の治療では、まず症状に対して治療を行います。
腹痛があればそれを緩和させるために鎮痙薬(腸の運動を抑制する薬)と下痢を抑える止痢薬を投与します。
便秘の薬は2つのタイプに分かれます。
1つ目が便を柔らかくして排便しやすくする薬、もう1つが腸の動きを活発にして排便を促す薬です。
このような薬を症状に応じて選びます。
便秘に対しては最近新しい薬が出てきており、治療選択の幅は広がっています。
過敏性腸症候群は生活の質に影響する疾患であるため、生活に最も影響している症状をとることが主体となって、治療の選択を行なっています。
もちろん、精神的な因子が考えられる場合には、必要に応じて専門医に相談することもあります。
過敏性腸症候群は、ローマⅣ基準によると、6ヶ月前から症状が始まっていて、直近の3ヶ月間、週に1回以上腹痛がある、とされています。
長い経過のある慢性の疾患であるという点がポイントです。
短い期間(直近1~2週間)で始まった下痢などは、急性の胃腸炎などを疑うべきでしょう。
もちろん患者さんにとっては、生活の質に影響するような腹部の症状があるため、症状を早く改善したい気持ちがあります。
しかし、少しずついろいろな薬に変えて症状と付き合いながら、少しずつ改善していくことが治療には重要です。
つまり、100あった痛みを80、70に減らしていき、少しずつでも軽くしていくことが大切なのです。
現在は情報過多の時代であり、インターネットを通じて莫大な量の情報が流れています。
患者さん自身は非常に困っている状態ですから、自分の病態がどのようなものなのかを知りたくて、いろいろと検索します。
そこで自分の症状にピッタリと合う疾患を見つけると、そこに誘導されてしまいます。
胃腸系の疾患ですと、主に海外で報告されている「セリアック病」などを疑って来院する人もいます。
仮にそのような疾患であるとしても、インターネット上の情報は参考程度にとどめ、確定診断は医療機関を受診して、専門の医師による治療を受けて欲しいと思います。