胃食道逆流症(GERD)は、胃の内容物の逆流に伴って起きる粘膜傷害または自覚症状を有する疾患です。
そのタイプには
①自覚症状はないが粘膜傷害があるタイプ
②粘膜傷害がなく自覚症状のみがあるタイプ
③粘膜傷害と自覚症状の両方があるタイプ
の3種類があります。
①や③のような胃の粘膜障害を認める病態が「逆流性食道炎」です。
それに対して、②のような胃の粘膜障害はなく症状のみを認める病態を「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」といいます。
胃液の逆流による疾患というと一般的に逆流性食道炎を思い浮かべる方が多いですが、GERDには逆流性食道炎とNERDの両方が含まれています。
例えば、健診や内視鏡検査の際に、医師から「逆流性食道炎の所見はない」と伝えられた場合は、逆流はしているけれど粘膜障害を認めないNERDではないとは言い切れません。
逆流性食道炎は日本人の間でも増えてきており、有病率は約10%程度といわれています。
一方、NERDは15〜20%程度だと推測されます。
胃食道逆流症の代表的な症状は、胸やけ(みぞおちの上部が焼けるような感覚)と呑酸(どんさん;胃液が上がってくる感じ)です。
自覚症状を感じていない人の中にも、健診で異常が見つかった後によくお話を伺うと、胃食道逆流症の症状に当てはまる方もいます。
胃の不調が現れ、症状が似ている疾患として「機能性ディスペプシア」があります。
機能性ディスペプシアとは、原因となる明らかな異常がないのに、慢性的に胃の痛みやもたれなどを感じる疾患です。
機能性ディスペプシアの代表的な症状は、食後の胃もたれです。
また、少し食べただけですぐにお腹がいっぱいになる早期飽満感や、みぞおち周辺の焼ける感じ・痛みが生じる場合もあります。
胃食道逆流症と機能性ディスペプシアの症状は一部似ており、区別がつきにくい点があります。
しかし、胃食道逆流症は食道に不快感などが生じるため、症状が現れる場所である程度区別できます。
胃食道逆流症は、内視鏡検査で胃と食道のつなぎ目に炎症があるかどうかを確認することが重要です。
また、内視鏡検査で胃の粘膜障害を認めなくても実際には胃酸などが逆流している人もいます。
それを調べる検査が、24時間pHインピーダンスモニタリング検査です。
この検査では、胃と食道のpHを24時間測定し、症状と逆流が関連しているかどうかを確かめます。
症状の原因として食道の動きに異常が疑われる場合は、食道に圧センサーを留置して運動能を調べる高解像度食道内圧測定を行う場合もあります。
いずれも専門性の高い検査であるため、大学病院などの専門病院でないと検査ができないのが現状です。
そのため、地域の病院と専門病院が連携しながら診療にあたっています。