そもそも胃と食道のつなぎ目(胃食道接合部)には括約筋があり、食べ物や胃酸などが上がってこないように普段は閉じている状態です。
食べ物や飲み物が口から入ってきた時だけ、括約筋が開き胃へ通します。
逆流が起こる要因には3つあります。
① 括約筋の締まりが悪くなり、胃と食道のつなぎ目が緩んでしまうことがあります。
すると、つなぎ目から胃がはみ出す「食道裂孔ヘルニア」が起こり、逆流しやすくなります。
② 何らかの誘因によって腹圧が高まると、周囲から胃が圧迫されて逆流が生じます。
③ 飲食とは関係なく括約筋が一時的に開いてしまうのが「一過性LES弛緩」です。
食べ物や空気で胃が膨らむと、胃の圧を減らすために括約筋を開いて空気を抜こうとします。
その際、空気だけではなく胃酸が時々逆流してしまう状態です。
食べ過ぎなど、さまざまな要因によって起こり、逆流が生じます。
胃食道逆流症になりやすいのは、肥満の人です。
内臓脂肪が増えると腹圧も高まるため、逆流が起きやすくなります。
その他、脂っこい食事、飲酒の機会が多い、過食、ストレスなども誘発因子になります。
ヘリコバクター・ピロリ菌の感染も要因の一つです。
これまで日本人のピロリ菌感染率は非常に高くなっていました。
ピロリ菌に感染して胃の粘膜がすり減る「萎縮性胃炎」にかかることで、胃酸の分泌は少なくなります。
しかし、最近では若い人の間で10人に1人くらいの感染率に低下しているため、胃酸分泌が活発な人が増え、胃食道逆流症を起こしやすくなっています。
また、高齢化に伴い背中が曲がるなどの骨変形が起こることも、腹圧が高まる要因の一つです。
これらの要素から、日本人の胃食道逆流症(GERD)や逆流性食道炎が増えています。
胃食道逆流症の主な治療は、胃酸の分泌を抑えるなどの薬物療法です。
主に用いられる治療薬は、プロトンポンプ阻害薬です。
これは、胃酸を分泌する細胞の最終段階にあるプロトンポンプを阻害して胃酸の分泌を抑えます。
また、2015年に登場したカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(一般名:ボノプラザン)も使われています。
これは、新しい作用機序で酸の分泌をより強く抑制するお薬です。
逆流性食道炎にはグレードA〜Dの4段階があり、グレードA・Bは軽症の逆流性食道炎、グレードC・Dは重症の逆流性食道炎に分類されます。
『GERDの診療ガイドライン2021(改訂第3版)』では、軽症と重症の逆流性食道炎によって治療方針が分けられています。
軽症逆流性食道炎では、よく用いられるのがプロトンポンプ阻害薬とボノプラザンです。
重症逆流性食道炎では、ボノプラザンの方が早く作用するため、第一選択薬として推奨されています。
ただし、人によって症状や状態が異なりますので、医師と相談しながら治療を進めていくことが大切です。