体重減少性無月経と摂食障害の治療:原因は?治療過程は?

月経は女性にとって避けては通れないテーマの一つでしょう。特に無月経の症状は重大な障害を遺すものもあります。 今回は、無月経の中でもアスリートの人や摂食障害患者さんと関連の深い「体重性無月経」のお関連などについて、横浜市立大学付属 市民総合医療センター・婦人科の榊原 秀也先生に教えていただきました。

 

横浜市立大学附属市民総合医療センター 新型コロナウイルス感染症対応の記録

https://www.yokohama-cu.ac.jp/urahp/outline/topics/20210531/COVID-19film.html

 

体重減少性無月経について:女性ホルモンの低下が様々な症状を引き起こす

 

 

体重減少性無月経で起きてくる症状は、エストロゲン(女性ホルモン)の低下が原因とされています。

女性ホルモンの分泌が無くなることで、月経が停止するだけでなく骨粗鬆症になることもあります。

 

アスリートの場合には、「三主徴」と呼ばれる特徴があります。

1つはエネルギーバランスです。

体重制限がある競技の場合は、食事で摂取するより消費するカロリー(エネルギー)の方がかなり多いため、エネルギー収支がマイナスになって体重現象が起こりやすくなります。

体重が減ることによって女性ホルモンの分泌が減少し、月経が停止します。

 

女性ホルモンは骨密度にも関係しているため、分泌減少は骨粗鬆症も引き起こします。

骨粗鬆症になると、強度の高い運動で疲労骨折を起こすなど、重大な障害を起こしやすくなります。

 

女性ホルモンと骨密度の関係性

 

 

摂食障害における鑑別法:精神科との協力体制が重要

 

 

ほとんどのケースは、精神科からのコンサルトで摂食障害の患者さんのケアとして依頼される場合です。

また、無月経のケースで摂食障害が疑われる場合もあります。

その場合、鑑別としてダイエットや運動性によるものとの区別が必要になります。

拒食症というわけでなく、食べて吐き戻す(過食嘔吐)といった異常行動が見られることがあります。

摂食障害では、極端な痩せと、自分が痩せているという認識が無い点を鑑別しなければならないことが多いようです。

摂食障害は実際にはなかなか治りにくく、精神科の治療で体重の回復を目指します。

 

無月経は、痩せて女性ホルモンが減少している状態ですが、単純に女性ホルモンを足せば良いわけではありません。

診療ガイドラインでは、体力が十分に回復していない時に月経を再開させるべきではない、と提唱されています。

つまり、ある程度体重が回復してから月経の再開を目指すことになります。

しかし、摂食障害による無月経でも、女性ホルモンの減少があるのは事実です。

 

骨粗鬆症のケアも同時に行わなければなりません。

このため、ビタミン製剤(ビタミンD・ビタミンK)を用いることが多いです。

特に摂食障害の患者さんは、食事から必要栄養素を摂取することが困難であるため、サプリメント等で必要なビタミン類、カルシウムなどを摂取してもらいます。

 

 

治療における今後の課題:正しい知識を広めることが重要

 

 

女性にとって、月経はとても身近なものですが、それに関する知識は必ずしも十分であるとは言えません。

今後、学会としても啓発していくことは必要だと考えられています。

 

現在、インターネット上では色々な学会やクリニックのホームページが存在するため、それらをきちんと読んで正確な情報を得てほしいと思います。

無月経や月経痛などを無理に我慢することなく、専門家に相談してみてください。

 

 

 

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