認知症の病態には2つの要素があります。
1つが認知機能の低下、もう一つが認知機能が低下した結果、生活に支障が出てくるということです。
この2つの要素があって初めて「認知症」と呼ばれます。
「認知症」と一括りにしても、その種類は様々です。
アルツハイマー病や血管性認知症、レビー小体型認知症など、その病態や発症原因によって分類されています。
認知症の人のうち、3分の2がアルツハイマー病と言われています。
血管性の認知症は、脳の動脈硬化や脳梗塞、脳出血によるものです。
また、「レビー小体型認知症」は、アルツハイマー病と似ている病態ですが、パーキンソン病に近い症状を伴います。
また、若い人で発症しやすいのが「前頭側頭型認知症」と呼ばれるもので、昔は「ピック病」と呼ばれていました。
一方、80歳以上の高齢者で発症しやすいのが「高齢者タウオパチー」です。
アルツハイマー病と似た病気ですが、脳の変化はアルツハイマー病と異なっており、その患者の数は増えてきています。
高齢者の特徴として、複数の脳の疾患が同時に発生しており、その結果として認知症になっている、というケースがあります。
アルツハイマー病の発症原因は、厳密にはまだ解明されていませんが、可能性が高いとされているのは、脳に「アミロイドβ」というタンパク質が異常な形で蓄積してしまうことです。
その後、「タウ」と呼ばれる別のタンパク質が異常な形になって、脳の神経細胞の中に溜まってきます。
この2つの変化が発症の背景にあると考えられています。
アルツハイマー病発症の直接の原因は、神経細胞の働きが低下して、あるいは神経細胞の数が減少することですが、そこに至るまでのプロセスに2種類のタンパク質が異常に蓄積する、という現象があると考えられているのです。
アルツハイマー病は、正確に診断するのが難しい病気です。
アルツハイマー病のリスク因子と考えられている事象はたくさんありますが、それが必ずしもアルツハイマー病の発症に関係しているかというとそうではありません。
しかし、その中でも「加齢」は大きなリスク因子の一つです。
遺伝性でアルツハイマー病を発症する人は非常に稀で、70、80歳になって発症する人が遺伝性であることはほとんどありません。
遺伝子の異常よりも、頻度が高く起こるような遺伝的体質で、アルツハイマー病になりやすい・なりにくい、ということは言えます。
動脈硬化や高血圧、高脂血症、糖尿病など血管の変化が起こりやすくなる状況は、アルツハイマー病のリスクであると考えられています。
また、糖尿病はそれ自体がアルツハイマー病のリスクです。
また、認知症全般にいえるリスク因子として、活動量の低下があります。
運動量や社会的な活動(人との繋がりなど)が減少することは、認知症発症のリスクと考えられています。
その他、喫煙や偏食、繰り返し起こる頭部外傷、難聴などもリスク因子だと言われています。